真空管式からIC・トランジスタへ、アナログ周波数表示からデジタル表示へ--アマチュア無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代だった。全国各地のコレクターが所蔵する当時の無線機の数々を取材し、2012年に刊行されたのが『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』(三才ブックス)という豪華写真集だ。今回はその誌面から、井上電機製作所が発売した5台目のアマチュア機「FDAM-3」と、あとにブランド名が「ICOM(イコム)」に変更されたときマイナーチェンジ版として登場した「AM-3D」を紹介しよう。
FDAM-3は井上電機製作所が発売した5台目のアマチュア機。フロントパネルに「I.C.E.」という略称が記載されていますが、あと数年経つと、現在でもお馴染みの「ICOM」に変わります(ただし当時は「イコム」と呼称していた)。
FDAM-3は送受信に50~54MHzをカバーするVFOを初搭載。受信用のVFOで相手局を探し、送信用VFOで受信周波数とのキャリブレーションを取ってから応答するという使い方であるにもかかわらず、50MHz帯のどこでも電波が出せて、デザインや操作性に優れていたことから人気を呼びました。しかしFMモードは専用の受信回路を持たず、AMモードのままわずかに周波数をズラして復調する「スロープ検波」という方式を採用、運用中にVFO の周波数ズレが目立つという声もありました。
なお、1971年にVFOの安定度向上やダイヤル面に照明を装備したマイナーチェンジ版の「AM-3D」が登場。興味深いことに、井上電機製作所(アイコム)は、このAM-3D以降、AMモードが出せる50MHz帯のポータブル機やハンディ機を発売していません。
(『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』 誌面から)
【スペック】
・発売開始時期 1967年(AM-3Dは1971年)
・周波数範囲 50.0~54.0MHz
・電波型式 AM/FM(FM受信はスロープ検波)
・サイズ 210W×75H×205Dmm(突起物含む)
・重量 約3.7kg ・電源 DC13.5V、または単1乾電池×9本
・最大消費電流 800mA(AM 最大変調時)
・最大送信出力 1W ・送信終段名称 2SC776
・受信方式 ダブルスーパーヘテロダイン方式
・主要機能と特徴 ▼オールトランジスタのトランシーバ。シリコントランジスタで耐熱効果に優れる▼受信部はFET 採用▼50~54MHzを送受信2つのVFO でフルカバー▼送受信の周波数が合わせられるキャリブレーション機能搭載▼単1 乾電池9 本を内蔵してポータブル運用が可能▼ 固定チャンネル用水晶として50.5MHzを内蔵(AMモード)▼VFOにバリキャップをビルトインしFM モードの運用も可能。スロープ検波によるFMモード受信可能
・価格 28,500円
・JARL 登録番号 I-1(AM-3D)
【写真集『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』について】
日本のアマチュア無線史の中で、無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代でした。送受信部とも真空管を使った大型機が、やがて電力増幅部を除いて半導体化。さらに全部がソリッドステートになり、ICやFETなどのデバイスや、PLLなどの最新技術により小型で高性能なモデルが登場するようになりました。そして家電やカーオーディオメーカーの参入も…。本書はそんな1970年代のアマチュア無線機に「憧れ」や「郷愁」を感じる、すべての人に贈る、初めてのアマチュア無線機写真集です。
●関連リンク:アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>
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