真空管式からIC・トランジスタへ、アナログ周波数表示からデジタル表示へ--アマチュア無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代だった。全国各地のコレクターが所蔵する当時の無線機の数々を取材し、2012年に刊行されたのが『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』(三才ブックス)という豪華写真集だ。今回はその誌面から、当時の技術の粋を結集して八重洲無線が世に送り出した高級モデル「FT-901DM」を紹介しよう。
1970年代前半、八重洲無線の短波帯トランシーバは「FT-101シリーズ」を頂点とし、その下にいくつかの中級機や入門機をラインアップするという構成になっていました。この原則が崩れ、101シリーズ以上のハイスペックな無線機として登場したのが、1977年のFT-901シリーズでした。周波数がアナログ表示のFT-901E(100W機)とFT- 901S(10W機)をベースモデルとし、デジタル周波数表示のFT-901D(100W機)とFT-901SD(10W機)があり、さらに最高機種としてデジタルメモリーを搭載したFT-901DM(100W機)が君臨するという5モデルが登場。送信管6146Bを使用したクリーンで余裕ある電波、各種の混信除去機能の搭載、FMやRTTY運用への対応、エレキーを初めとする各種付属機能の搭載など、101シリーズの上を行くハイグレードな仕様でしたが、価格もFT-901DMで268,000円(その後価格変更)と、FT-101ES の2台分以上という設定になりました。
FT-901シリーズで初めて付けられた「9」の数字は、その後もFT-980やFT-920、FTDX9000などの高級機に受け継がれています。
(『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』 誌面から)
【スペック】
●発売開始時期:1977年
●周波数範囲:1.9~28MHz帯(後期バージョンはWARC バンド受信対応)
●電波型式:SSB/CW/AM/RTTY/FM
●サイズ:W342×H154×D324mm
●重量:約18kg
●電源:AC100V、DC13.5V
●最大消費電流:3.7A(AC100V時)
●最大送信出力:SSB/CW 100W AM/FM/RTTY 40W
●送信終段名称:6146B×2
●受信方式:スーパーヘテロダイン方式
●主要機能と特徴(当時のカタログより抜粋):
▼WARC 新バンド受信対応(一部バージョン)▼PLL 技術を採り入れクリーンな電波を 発射▼RF スピーチプロセッサ内蔵▼IF ワイズ▼リジェクションチューニング▼APF 機能▼周波数メモリー回路搭載▼オートマチックゲインコントロール▼ワンタッチ TUNE 回路▼FM 運用も可能▼エレクトロニックキーヤー内蔵▼豊富な付属回路
●価格:268,000円
●JARL登録番号:Y-72H
【写真集『アマチュア無線無線機コレクション<FT-101の時代>』について】
日本のアマチュア無線史の中で、無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代でした。送受信部とも真空管を使った大型機が、やがて電力増幅部を除いて半導体化。さらに全部がソリッドステートになり、ICやFETなどのデバイスや、PLLなどの最新技術により小型で高性能なモデルが登場するようになりました。そして家電やカーオーディオメーカーの参入も…。本書はそんな1970年代のアマチュア無線機に「憧れ」や「郷愁」を感じる、すべての人に贈る、初めてのアマチュア無線機写真集です。
●関連リンク:アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>
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