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【特別寄稿】相互運用協定のこれまで~一歩進んだアマチュア無線家をめざして<最終回>

外国とのアマチュア無線資格の相互認証(いわゆる相互運用協定=レシプロ)の締結先が久しぶりに増えた。9月29日にニュージーランド(ZL)、10月21日にはインドネシア(YB)との相互認証が施行された。そこで、アマチュア無線のコールサインや法制度研究の第一人者、JJ1WTL 本林良太氏の特別寄稿により、レシプロ制度に分析するとともに、これまでの外国人の日本での運用手段を振り返る。今回はその第8回目、最終回だ。

●社団局での特権

 レシプロで国内外の資格対比を定めているH5告示326には、『別表第2号』というナゾの表が付いている。 その意味するところについて読み解こう。
 具体例がないと説明しにくいので、日本にやってきたアメリカのAdvanced級の有資格者を例とする。 まず、アメリカのAdvanced級の所持者は、アメリカ本国では1.5kW PEPまで出せる(PEP: Peak Envelope Power、尖頭包絡線電力)。 しかし日本に来ると、レシプロ上では「二アマ」相当とみなされる。 となると、200Wまでしか認められない。
 こういった際にオイシイのが、『H5告示326 別表第2号』なのだ(下図に概念)。 もし「社団局」で、「日本の一アマの指揮の下」だったら、1kWまで出せる。

 

アメリカのAdvanced級の所持者は、「日本の社団局」で、「日本の一アマの指揮の下」であれば1kWまで出せる

アメリカのAdvanced級の所持者は、「日本の社団局」で、「日本の一アマの指揮の下」であれば1kWまで出せる

 

 とはいえ、「所持資格」と「立会人(指揮する者)」との組み合わせによって、効果が得られる場合もあるし、そうでない場合もある。このAdvanced級の場合でも、立ち会いが二アマだったら結局200Wまでの運用に留まるし、Amateur Extra級を所持していればハナから一アマとみなされるので、ここで言及しているような追加的な効果は得られない。

 一方で、あまりおいしくない話もある。 まず、日本においてもアメリカのサブバンドを引きずることになる。 たとえばAdvanced級の場合、7,000~7,025kHzは運用できない。 またその外国人ハムが日本国内で「個人局を開設していない」のであれば、事前登録が必要となる〔H5告示326 別表第三号様式『アマチュア局の無線設備の操作のための登録証明書』〕。 だからいきなり、「いいときに日本に来てくれました、コンテスト手伝って、あとで構成員に登録しておくから」というわけにはいかないのだ。 もっとも、ゲストオペとして社団局を運用することもできるが、その場合は、Advanced級を例に取れば、「みなし二アマ」なので、二アマの操作範囲内(200W以下)に留まる。

 

●外国人ハムが日本で運用するには?

 さて、とどのつまり、外国人ハムが日本で運用する手だては、「レシプロ対象国の免許か、日本の無線従事者免許を持っている」前提で、(1) ゲストオペで運用、(2) 社団局の構成員で運用、(3) 個人局を設備共用で開設、(4) 個人局を自身のリグを確保し開設、(5) とっても大きな国際イベントの記念局を運用――の5とおりとなる。

 まず前提として、「免許がない」というわけには、さすがにいかない。 (余談だが、それを唯一許しているのが、ARISSスクールコンタクトの小中学生だ) レシプロ対象11か国のいずれかの免許を持っているか、日本の無線従事者免許を持っていることが必要となる。 この際、国籍は問われない。いかなる国の方でも構わない。
 例外として「とっても大きな国際イベントの記念局」の場合には、「レシプロ対象国以外」の免許でも認められる。

 

(1)ゲストオペで運用
 一番簡単なのがこのゲストオペ。“ゲストオペ”というくらいで、ホストの立ち会いが必要になる。 「個人局」であっても、「社団局」であっても、適用の対象になる。操作範囲は、ゲスト自身の資格による制限に加えて、ホストの資格による制限も受ける。 たとえば、ゲストがアメリカのAmateur Extra級なら、日本では一アマ相当だが、ホストが四アマなら、ホストの操作範囲に制限される。
 これは社団局の場合でも同様だ。 たとえば社団局の免許が1kWまであったとしても、そのときに立ち会ってくれる構成員が四アマなら、10W(一部20W)までの操作に制限される。

 

(2)社団局の構成員で運用
 この手もある。 ただし、「日本で開局していない外国人ハム」の場合、事前に総通への書面登録手続きが必要だ。 なので大多数の場合、「ゲストオペのほうが簡単でいいや」となるだろう。 それでも「ゲストオペ」よりも「構成員」を目指す際のメリットは、(1)「立会人となる構成員が不要」なので運用の自由度が増す点、(2) 「個人局では得られない特権が得られることもある」点(先述)であろう。

 

(3)個人局を設備共用で開設
 日本仕様のリグ――要は、技適マーク付き――を新規に買いそろえるよりも経済的な負担は小さい。 ただし“設備共用”というくらいで、ホストと、設置場所・常置場所は同一でなければならない。
 とはいえ別な場所から運用しても、「ポータブル表示」*は、いまは“慣習に基づくJARLの推奨”という位置づけなのだから、必ずしも付ける必要はない。(*: かつて昭和30年2月9日郵波陸第261号として通達されたが、いまは失効している。総務省に確認。)
 この形の場合、ゲストオペとは異なり、「ホストの立ち会いは不要」にできるメリットがある。 もっとも、リグは共用なので、リグの奪い合いだけは発生する。なお、コールサインは新規にゲストのものが発給される。 「ワタシ日本ノこーるさいん、ホシイノデス」というゲストの場合には有用な形態だ。
 ただし、開局手続き~免許までのリードタイムは必要。 短期間の滞在なら間に合わないだろう。設備共用の際の書面手続きについては、CQ ham radio 2005年12月号pp.130-131のJJ1VKL著「快適無線研究所 運用研究室●高校生ハムを増やそう」で例示がある。

 

(4)個人局をリグを自己調達して開設
 基本は、日本国内では技適マーク付きのリグが必要だ。それを自身が買ってくることに相当する。もっとも日本人の場合と同様に、TSSから保証認定を受ける、自分で技適を通す、検査を受ける(総通または業者)といった別の手がないこともない。 本国から持ち込んだリグをそのまま使うのは、不可能ではないが…かなりハードルが高い。
 この形態も、コールサインは新規に発給される。 言い換えれば、リードタイムが長い。 申請手続きは当然日本語だ。

 

(5)とっても大きな国際イベントの記念局を運用
 万博、オリンピック、国際会議、ボーイスカウトワールドジャンボリー級の大きなイベントにちなんで開設される記念局においては、レシプロ対象11ヶ国以外のライセンス所持者でも、例外としてその記念局の運用が認められることがある。

 

●まとめ
 以上、日本を訪れた外国人ハムにとっての運用方法をまとめた。 表にもしておこう。 母国からのリグの持ち込みは、基本不可だ。

 

 
ゲストオペ 社団局の構成員 個人局を開設 国際イベントの記念局
設備共用 自己調達
リグの購入 ○(不要) ○(不要) ○(不要) ×(要) ○(不要)
総通への手続き ○(不要) △(軽く要) ×(要) ×(要) ○(不要)
立会人 ×(要) △(場合による) ○(不要) ○(不要) ×(要)
自身の日本のコールサイン なし なし あり あり なし
運用機会 △(知人要) △(知人要) △(知人要) ○(任意) ×(激レア)

 

 我々日本人ハムが ぷらっと行ってそのまま運用できるレシプロ締結国、いやレシプロさえ締結していない国すらある中で、反対に、日本への受け入れ時の障壁は恐ろしく高い。 外国へ運用に行ったときには謝意を忘れずに、また、外国人ハムを受け入れるときにはオモテナシを忘れないようにしよう。[完]

 

寄稿:JJ1WTL 本林良太

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