真空管式からIC・トランジスタへ、アナログ周波数表示からデジタル表示へ--アマチュア無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代だった。全国各地のコレクターが所蔵する当時の無線機の数々を取材し、2012年に刊行されたのが『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』(三才ブックス)という豪華写真集だ。今回はその誌面から、「スカろく」の愛称で親しまれた日新電子工業の「SKYELITE 6」を紹介しよう。
X線異物検査装置や金属検出器などのメーカーとして著名な「日新電子工業」は、1951年に船舶用通信機器のメーカーとして創業。1970年前後に数機種だけアマチュア無線機器の製造販売を行いました。
その第1号機は50MHz帯の10W真空管式AMトランシーバー、「PANASKY mark6(パナスカイ マークシックス)」、通称「パナろく」そのマイナーチェンジ版が「SKYELITE 6(スカイエリート シックス)」、通称「スカろく」です。
前面パネルの半分近くを内蔵スピーカーのスペースにしたデザインはアマチュア機としては斬新(船舶用無線機のデザインを踏襲?)。中央のメーター下部にある送受信別々のVFOツマミを操作して周波数を設定する方式でした。変調は6GW8プッシュプルを使用したプレートスクリーン同時変調で、終段管には2E26を使用。深い変調とパワフルな10W出力が印象的な機種で、当時は学校のクラブ局でよく使用されました。また南極観測隊の雪上車にも搭載されたことが、当時の雑誌広告で謳われていました。
【スペック】
●発売開始時期:1970年
●周波数範囲:50.0~52.5MHz
●電波型式:AM
●サイズ:300W×125H×275Dmm
●重量:約7.9kg
●電源:AC100V、DC12V
●最大消費電流:8A(DC、無変調時最大)
●最大送信出力:10W
●送信終段名称:2E26
●受信方式:ダブルスーパーヘテロダイン方式
●主要機能と特徴(当時のカタログより抜粋):
▼ARRLのハムが絶賛、一流商業デザイナーによる優美でシャックにマッチしたダイナミックなデザイン▼ソリッドステートのDC/DCコンバータ内蔵▼極めて安定なVFO内蔵、クリスタル1ch使用可能▼TVI防止フィルター内蔵▼空中線整合にπマッチ採用▼受信周波数に合わせて送信するためのスポットスイッチ装備
●価格:36,900円
●JARL登録番号:なし
【写真集『アマチュア無線無線機コレクション<FT-101の時代>』について】
日本のアマチュア無線史の中で、無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代でした。送受信部とも真空管を使った大型機が、やがて電力増幅部を除いて半導体化。さらに全部がソリッドステートになり、ICやFETなどのデバイスや、PLLなどの最新技術により小型で高性能なモデルが登場するようになりました。そして家電やカーオーディオメーカーの参入も…。本書はそんな1970年代のアマチュア無線機に「憧れ」や「郷愁」を感じる、すべての人に贈る、初めてのアマチュア無線機写真集です。
●【アマチュア無線機Collection】バックナンバー
・ 入門機として絶大な人気を誇った50MHz帯AM/FMポータブル機--松下電器産業・RJX-601(1973年)
・「弁当箱」の愛称で親しまれた144MHz帯ポータブル機--トリオ・TR-2200(1970年)
・“ワンノーワン”の頂点に立った機能充実の3代目--八重洲無線・FT-101E(1975年)
・高級感溢れるブロンズパネルの送受信機--トリオ・T-599S/R-599S(1973年)
・八重洲無線の技術の粋を結集した高級モデル--八重洲無線・FT-901DM(1977年)
・真空管使用の50MHz帯AMトランシーバキット--ミズホ通信・FB-6J/FB JUNIOR(1972年)
・単1電池×9本が必要な50MHz帯AM/FMポータブル--井上電機製作所・FDAM-3(1967年)/AM-3D(1971年)
・ヤエスFT-101シリーズ最大のライバル見参--トリオ・TS-520X(1973年)
・“ワンノーワン”の歴史は、このモデルから始まった--八重洲無線・初代FT-101(1970年)
●いったん広告です: