2016年12月9日、種子島宇宙センターから打ち上げられた無人補給機「こうのとり」6号機は無事に国際宇宙ステーション(ISS)へ到達した。その中に搭載されていた7基の超小型衛星(CubeSat)が順次ISSから放出されることになった。日本時間の12月19日(月)17:30~18:30には、まず静岡大学の衛星「STARS-C」が放出される。その他の超小型衛星の放出はISSの放出装置を改修する必要があるため、来年1月からになる見込みだ。
JAXA発表の資料によると、今回、無人補給機「こうのとり」6号機がISSに運んだ超小型衛星は下記の7基になる。このうちアマチュア無線バンドの送信機能を搭載しているのは「AOBA-Velox III」「TuPOD」「ITF-2」「STARS-C」「WASEDA-SAT3」の5基。「TuPOD」は放出後に2つに分離し「Tancred-1」と「OSNSAT」になる予定だ。
各衛星の送信周波数などをJARL Webの記事から一部引用する。
●AOBA-Velox III(3U-CubeSat)
九州工業大学/南洋理工大学(シンガポール)
437.375MHz AFSK
●TuPOD(3U-CubeSat)
イタリアの小型衛星開発会社GAUSS-srlが製作、1.5UサイズのTubeSat2機を搭載。ISSから放出後に分離する
・Tancred-1(1.5Uサイズの円筒形)
ブラジルの公立学校の子供たちが組み立てを行った
437.200MHz AX.25
・OSNSAT(1.5Uサイズの円筒形)
Open Space Network社(アメリカ)
437.435MHz GMSK
●ITF-2(1U-CubeSat)
筑波大学
437.525MHz FM、CW
●STARS-C(2U-CubeSat)
静岡大学
1Uサイズの衛星(親機・子機)がテザー(紐)で結ばれ、放出後に親機・子機を2つに分離
・親機:437.245MHz CW/437.405MHz FM
・子機:437.255MHz CW/437.425MHz FM
●WASEDA-SAT3(1U-CubeSat)
早稲田大学
437.290MHz AX.25、CW
7基の先陣を切って、12月19日(月)の17:30~18:30に、静岡大学の超小型衛星「STARS-C(愛称:はごろも)」がISSから放出されることになった。これ以外の衛星の放出はISS側の放出装置を改良型のものに改修(交換)する必要があるため、来年1月からになると言われている。
なお、静岡大学の「STARS-C」が放出後に発射するビーコンなどの情報は、すでに同衛星のプロジェクト関係者から公表されている。特に投入直後のCWビーコン(テレメトリ)についてアマチュア無線家からの受信報告を切望している。後日記念のQSLカード(ベリカード)も発行されるという。
★静岡大学「STARS-C(はごろも)」の電波発射情報
◆「STARS-C」ダウンリンク周波数
・親衛星(JJ2YPL):CWビーコン 437.245MHz、FMパケット 437.405MHz
・子衛星(JJ2YPM):CWビーコン 437.255MHz、FMパケット 437.425MHz
CWビーコンは常時送信、FMパケットは管制局からのコマンドによりダウンリンクを実施
FMパケットは通常1,200bps。画像データ送信時などは9,600bpsに変更有。その場合は公式Twitterアカウントでアナウンス予定
◆CWのビーコン(テレメトリ)の内容
☆Mother: JJ2YPM Daughter: JJ2YPL (Amateur radio station call sign)
☆Second line M2_AAA_BBB_CCC (Format is Hexadecimal)
(Mutable data : Nominal data is House Keeping Data)
Li-ion battery Voltage: V=HEX2DEC(AAA)*5/1024 [V]
Solar cell Voltage: V=HEX2DEC(BBB)*5/1024*2 [V]
COM (Receiver) Voltage: V= HEX2DEC(CCC)*5/1024 [V
☆Third Line S1_DD_EE_FF_GG(Format is Hexadecimal)
(Fixed data)
RSSI: R= HEX2DEC(DD)*5/256 []
GPS: X=HEX2DEC(EE)*4.096/200 []
GPS: Y=HEX2DEC(FF)*4.096/200 []
GPS: Z=HEX2DEC(GG)*4.096/200 []
☆Fourth Line M4_HHH_III_JJJ(Format is Hexadecimal)
(Mutable data : Nominal data is House Keeping Data)
Solar sell current:
A1= HEX2DEC(HHH)*5/1024/2 [A]
A2= HEX2DEC(III)*5/1024/2 [A]
A3= HEX2DEC(JJJ)*5/1024/2 [A]
☆Fifth Line S2_KK_LL_MM_NN(Format is Hexadecimal)
(Fixed data)
Total voltage: V= HEX2DEC(KK)*5/256*2 [V]
Total current: A= HEX2DEC(LL)*5/256*50/33 [A]
Sub CPU voltage: V= HEX2DEC(MM)*5/256*2 [V]
Li-ion battery voltage: V= HEX2DEC(NN)5*/256 [A]
☆Sixth Line M6_OO_PP_QQ(Format is Hexadecimal)
(Mutable data : Nominal data is GPS Data)
GPS: X=HEX2DEC(OO)*4.096/200 []
GPS: Y=HEX2DEC(PP)*4.096/200 []
GPS: Z=HEX2DEC(QQ)*4.096/200 []
◆FMパケットのフォーマット
次のURLでPDF版資料が入手できる→ https://goo.gl/Ju8QL8
◆受信報告について
静岡大学人工衛星STARS-C(はごろも)は、アマチュア無線周波数帯を使用しています。そのためアマチュア無線局の方にご協力していただき、少しでも多くのデータを取得したいと考えています。今後ホームページなどでデータ受信を行うための方法や通過時間を公開していきますので、一人でも多くのアマチュア無線局の方のご協力をお待ちしています。
受信報告の受け付けフォーム https://ws.formzu.net/fgen/S96136629/
なお受信報告は内容確認後、QSLカード(ベリカード)の発行も予定。カードの発行方法など詳細は別途アナウンス予定
このSTARS-Cプロジェクトに関わっている静岡大学工学部の鈴木康之教授(JR2BEF、WR1J)は「放出直後、衛星からの電波はモールスだけです。モールスのみでGPSデータから軌道要素の算出を行ったり、電源系の状態を確認したりして、はじめて地球局からコマンドを送ってパケット系その他の通信回線が起動します。よって、最初の数周回(約90分で地球を一周)は、モールスのみが命綱です。にわか通信士(もちろん国家資格はゲットさせています)の学生にとって、モールスの受信が最大の難関です、どうぞ受信報告をお寄せいただき、助けてくださるようお願いします」「日本上空のオービットだけでなく、全世界で、特に放出直後のビーコンを拾っていただければと思います」と、アマチュア無線家に協力を呼びかけている。
●超小型衛星「STARS-C」(静岡大学)放出ライブ中継
<追記 12月20日13時>
静岡大学によると、同衛星は12月19日(月)17時50分にISS日本実験棟からの放出が成功、翌20日(火)にはヨーロッパ方面からの受信報告が相次ぎ、11時07分には静岡大学内の地球局でも親子衛星の両方のモールス信号を受信に成功したという。また日本各地のアマチュア無線家からの受信報告も複数到着している模様(※時刻表記はJST)。
●関連リンク:
・「こうのとり」6号機で運んだ超小型衛星「STARS-C」の放出日が決まりました(JAXA)
・STARS-C”はごろも”運用ブログ
・アマチュア無線家の皆様への受信協力のお願い(静岡大学 鈴木研究室)
・超小型衛星「STARS-C」(静岡大学)放出ライブ中継
・STARS-Cプロジェクト
・STARS-C プロジェクト概要(静岡大学 能見研究室)
・静岡大学STARSプロジェクト 公式Twitterアカウント
・国際宇宙ステーションの小型衛星放出ミッションで多数のCubeSatが放出に(JARL Web)
・Middle School Students’Tancredo-1“TubeSat”Set for Deployment from ISS(ARRL NEWS)
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