真空管式からIC・トランジスタへ、アナログ周波数表示からデジタル表示へ--アマチュア無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代だった。全国各地のコレクターが所蔵する当時の無線機の数々を取材し、2012年に刊行されたのが『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』(三才ブックス)という豪華写真集だ。今回はその誌面から、ヤングハムの心を掴んだ50MHz帯AM/FMポータブルの名機、松下電器産業(現パナソニック)の「RJX-601」を紹介しよう。
1973年、大手家電メーカーの松下電器産業がアマチュア無線市場に参入。その第1号機として発売したのが、このRJX-601です。完全1VFOで50~54MHz帯をAM/FMモードでフルカバー、しかも送信出力3Wというスペックは、トリオのTR-1200や井上電機製作所のAM-3Dの上を行く仕様。しかも、ナショナルのBCLラジオにも通じるメカニカルなデザイン、34,000円という価格(後年、37,000円に改訂)が、若年層のアマチュア無線家を虜にして、爆発的な売れ行きを示しました。
RJX-601にはいくつかのバージョンがあり、付属マイクの形状(大型/細長いもの)、フロントパネルの「NATIONAL」の表記(活字体/丸いロゴ)などで区別が可能です。発売当初はメインダイヤルにバックラッシュがある、AM変調が浅いといった指摘もありましたが、次第に改良が加えられていきました。また改造のしやすさでも知られ、呼出周波数の51.00MHzでキャリブレーションが取れるようにしたり、送受信LEDの組み込み、9MHz帯のラジオ受信や21MHz帯トランスバータへの改造を試みるファンもいて長く愛されました。
(『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』 誌面から)
【スペック】
●発売開始時期:1973年
●周波数範囲:50~54MHz
●電波型式:AM/FM
●サイズ:190W×65H×230Dmm
●重量:2.9kg
●電源:DC13.5Vまたは単2乾電池×9本
●最大消費電流:700mA
●最大送信出力:3W
●送信終段名称:2SC1306
●受信方式:ダブルスーパーヘテロダイン方式
●主要機能と特徴(当時のカタログより抜粋)
▼ハイレベルのレジャーライフを演出、50MHz帯アマチュアバンドをフルカバー▼送信出力3W/1W切り替え式▼AM/FMモードに対応、IF回路を独立化▼メインダイヤルは精密なボールドライブ式▼キャリブレート機能搭載、ダイヤル指針を較正可能▼安定度抜群のVFO 搭載▼スプリアス放射は-60dB以下に低減▼S/RF OUT兼用メーター
●価格:34,000円
●JARL登録番号:M-1
【写真集『アマチュア無線無線機コレクション<FT-101の時代>』について】
日本のアマチュア無線史の中で、無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代でした。送受信部とも真空管を使った大型機が、やがて電力増幅部を除いて半導体化。さらに全部がソリッドステートになり、ICやFETなどのデバイスや、PLLなどの最新技術により小型で高性能なモデルが登場するようになりました。そして家電やカーオーディオメーカーの参入も…。本書はそんな1970年代のアマチュア無線機に「憧れ」や「郷愁」を感じる、すべての人に贈る、初めてのアマチュア無線機写真集です。
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