3月4~7日に東京・有明で開催された「SECURITY SHOW 2014」の会場で、無線業界関係者の注目を集めていた展示があった。相手局が日本全国どこにいても交信可能で、使用に際して無線の資格や免許は不要、月々4,000円台から使えるという「IP業務無線(ボイスパケットトランシーバー)」だ。将来は業務無線機に取って代わる可能性もあると言われている、その特徴を紹介しよう。
「IP業務無線」は、マイクからの音声信号やGPSによる位置情報などをパケット信号に変換、端末に取り付けたデータ通信カードを使って携帯電話回線(MVNO事業者が借りたNTTドコモのFOMA網を使用)で送信。インターネットを介して専用サーバーで制御することにより、特定の局同士の交信やグループ内の一斉同報、移動局の現在位置表示(動態管理)などを可能にしたもの。
“無線機”本体はモービル機やハンディ機に近い形状をしているが、実際の送受信はFOMAのデータ通信カードで行うため、NTTドコモのサービスエリア内ならどこでも交信が可能で、しかも使用者は無線従事者資格や無線局免許が必要ない(IP業務無線機は「技適」を通す必要もない)というメリットがある。ただし災害時などにNTTドコモの基地局やネットワークに障害が生じた場合は、交信できない可能性がある。
従来、広範囲のエリアをカバーする業務用無線システムとしては800MHz帯や1.5GHz帯を使用した「MCA無線」があったが、イニシャルコスト、ランニングコストとも高額になる上、不感地帯も多く、通話時間に制限があるなどのデメリットもあった(アナログMCA無線は2018年3月までに全国で終了予定。1.5GHz帯のデジタルMCA無線は2014年3月でサービス終了)。
IP業務無線はこうした点を払拭、本体リース費と回線使用料を合わせ、1台あたり月額4,000円台からの固定料金で使用できるというリーズナブルな点も好評で、マスコミ業界や観光バス、大手物流会社などによる採用が相次いでいるという。
SECURITY SHOW 2014の会場では、業務用無線機器販売会社のオンザウェイ(東京都町田市)がシステムを実演展示していたが、交信はPTTボタンを押して行う単信方式のため音声遅延は気にならない。音声もD-STAR以上に明瞭だった。今後このシステムが普及すると、業務用無線の世界は大きく様変わりするかもしれない。
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