6月15日に行われた、一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)の「第3回定時社員総会」の質疑で出た内容の中には、出席していない一般会員にも興味深いものがあった。hamlife.jpではそのいくつかを紹介しているが、今回は一連のTSS株式会社との問題と、システム移行に関連した答弁からピックアップする。なんとTSSには今もJARL会員に関する「個人情報」が残ったままで、返却されていないという。
JARLのシステム関係の業務委託先だった「TSS株式会社」が、平成25年11月から平成26年11月の委託計算料等として、総額5421万6978円の支払いを求め、2月25日にJARLを提訴したことが第16回理事会で報告され、JARL Webでも明らかになった。
6月15日のJARL第3回定時社員総会では、出席社員からこの問題に関する質問が多数出された。JARL側(専務理事、会長、監事)の説明や答弁の中から特に注目される点を項目別に整理してみた。
●TSSとの値下げ交渉
TSSへの業務委託費用に「お金がかかりすぎている」という指摘は以前からもあった。JARLは平成22年から9回にわたって、会長、副会長、専務理事、事務局長などが同社と値下げ交渉を行ってきたが、ごくわずかな金額の値下げにしか応ぜず、「値下げは一切できない」という回答は変わることがなかった。
このままでは毎年約5,000万円の業務委託費用がムダになる恐れもあったので、やむなくシステム関係の業務委託先を変更するに至った。
●TSSとの訴訟内容
TSSとの業務委託契約は昭和59年(1984年)11月から「5年契約の自動更新」という形だった。JARLは契約書に基づいて、契約解除の1年前に通知を出したが、TSSは「平成26年(2014年)11月の5年契約満了までの委託費用(総額5421万6978円)を支払って欲しい」と要求してきた。これが訴訟になっている。裁判はまだ一度のみで、実質審理には入っていない。
●システム障害とTSSの主張
システム障害は、JARLが2013年11月に巣鴨から大塚へ事務局を移転するその日(11月2日)に発生。巣鴨の事務局とTSSのシステムを結ぶルーターの回線が突然切断された。TSSに対して再三にわたり調査と復旧を申し入れたが「それはJARLのせいです」との回答で、応じてもらえなかった。
TSSはこの回線切断について「JARLがワザと回線を切って、業務委託費用の支払いを免れようとした」と主張している。なぜ回線が切れたのかはわからない。
●平成25年度のTSSへの支払い費用
この日(2013年11月2日)以来、JARLは手作業で会員事務を行い、TSSからのサービス提供は受けていない。そのためメールなど一部を除いて、この日以降の費用は同社へ支払っていない。ちなみに平成25年度のTSSへの支払総額は約2,900万円(JARL NEWS費用200万円、QSL費用200万円、機械化事務費1,700万円など)になる。
●会員台帳と個人情報
TSSから「会員台帳を1億2000万円で買い取れ」という話が出たこともあった。同社にはJARL会員の個人情報がまだ残っている。これについては弁護士を通じて返却を求めているところだ。
TSSでは“痛い目に遭った”が、新委託先の株式会社アグレックスは東証一部の上場企業で、契約内容の条文も厳しいものとなっている。作成する会員台帳はJARLのものであることも明確になっている。
●アグレックスとの契約について
アグレックスは過去からJARLの選挙事務(投票用紙発送、開票など)を担当しており、JARLとの間に基本契約があった。そこでTSSに委託していた業務を引き継いでもらえるかを聞いたところ「できますよ」という回答だった。
TSSからの協力が得られない中、さまざまな事項を外に漏らして競争入札(複数社による相見積もり)という形は取れなかった。しかしアグレックスと交渉の結果、一番安い価格に落ち着いたと理解している。また一定期間が経過すれば競争原理が働くような契約内容としてある。
●新システムについての見解
新しいシステムは抜本的な対策を行った。アグレックスへの変更で一般的には良くなったと思う。今後も悪いところは直しながら運営していきたい。
※一連の「JARLシステム障害問題」関連記事は ココをクリック!!
●いったん広告です: