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【特別寄稿】日本の1アマは近い将来、欧州などの「CEPT加盟国」で運用できることになる!?

近い将来、日本のアマチュア無線家(1アマ)が、ヨーロッパに長期滞在した際、ほとんどの国でアマチュア無線の運用が簡単に始められるようになるかもしれない。これは欧州郵便電気通信主管庁会議(CEPT)が、2014年5月末に行ったRAFG(アマチュア無線分科会)の会合の中で、まず第一ステップとして、日本の1アマ資格所持者をCEPT T/R 61-02 (長期滞在者を対象とするアマチュア無線資格の相互認証)に認める方針を立てたことによるものだ。実際にはCEPTと日本の総務省の間で協定締結のための手続きを進めるため、実現にはまだ少し時間がかかりそうだ。そこでアマチュア無線のコールサインや法制度研究の第一人者、JJ1WTL・本林良太氏による特別寄稿「CEPTと運用協定とは?」をお届けしよう。

 

 

“CEPT”とは(1)――そもそも

 

 そもそもの『CEPT』とは、『欧州郵便電気通信主管庁会議』(Conférence Européenne des administrations des Postes et des Télécommunications、仏語)のことだ。 ヨーロッパにおいて、郵便や電気通信についての標準化を司る組織である。 ヨーロッパは、人も、物も、通信も、電波も、容易に国境を越える地域性ゆえ、国家間の調整は不可欠であり、1959年に19か国によって創設されている。 その後、ソ連やユーゴスラビアから離れた各国の加盟もあって国数は伸び、現在では48か国に膨らんでいる(個々には別掲、最後の加盟国は2007年のモンテネグロ)。

 またヨーロッパの域外むけの活動としても、『ITU(国際電気通信連合)』などの採決では「1国につき1票」なので、「小さな国がいっぱい集まった」ヨーロッパ勢が一丸となって挑むと、強い(意見を通しやすい)。 こういった標準化戦略のための連携の場の役割も果たしている。

 標準化後の実ビジネスでも、第二世代(2G)携帯電話で、ヨーロッパ発のGSM方式(Group Special Mobile、のちGlobal System for Mobile Communications)が世界的に普及したのも、産官を含めたヨーロッパ勢の一体戦略の成果だろう。

 

 

“CEPT”とは(2)――おそらくみなさんの思い描く

 

 ところが、アマチュア無線家が普通に“CEPT”というと、簡略的にむしろこちらのことを指すだろう。 CEPTが出した勧告の一つ『Recommendation T/R 61-01 “CEPT Radio Amateur Licence”』のことだ(http://www.erodocdb.dk/docs/doc98/official/pdf/TR6101.pdf などで参照可)。 これはなにを定めているか?というと、この勧告を採択――原語が”adopt”なのでこう訳すが、ようは加盟――した国において、アマチュア無線で、

 

 ●非居住者による(non-residents only)

 ●一時的な滞在に際し(for the duration of their temporary stays)

 ●全バンドで(utilisation of all frequency bands allocated to the Amateur Service and Amateur Satellite Service and authorised)

 ●母国の免許範囲での運用を許す(within the limit of validity of the national licence)

 

というものだ〔同勧告の1章(p.4/10)〕。

 

 CEPT加盟48か国のうち、これを40か国が採択している。加えて、この勧告『T/R 61-01』にはヨーロッパ域外の国の参加も認められており、アメリカを初め9か国が参加している(「キュラソー」と「旧オランダ領アンティル」もそれぞれ1か国とみなして計上)。

 アマチュア無線家にとってなにがウレシイかというと、採択国の一定基準のライセンス――「CEPTライセンス」として認められているもの――を持っていれば、ほかのどの採択国からでも、免許の手続きをすることなく、また日本でいう電波利用料などの費用も支払うことなく、運用できる点だ。 これなら、まさに「ぷらっと」他の国に行って簡単に運用できる。なお、その際の滞在期間は3か月以内と解釈できる。

 コールサインは、運用地の国籍識別(プリフィクス)を、ホームコールの前に「/」で区切って前置する形となる(例:M/JJ1WTL)。 なおここで、用いるべき国籍識別は勧告内できちんと決められており、たとえばイギリスならば「G」ではなく「M」を使わなければならない。 また「/」は、電話の場合の読み方は「ストローク」と、これも明示されているので、「ポータブル」と読んではいけない(「バイ」は論外)。

 ところでいまや「日本にいてアメリカの免許を持っている方」も少なくないが、この勧告の適用においては、「国籍」もアメリカであることが同時に求められる。 したがい、「アメリカの免許を持っていても国籍が日本の日本人」は、これまでこの勧告の恩恵にあずかることはできなかった。

 

 

“CEPT”とは(3)――今回の進展

 

 前項のようなオイシイ話のあとではあるが、このたび日本の一アマについて議論が進んだのは、それとは違って、『Recommendation T/R 61-02 “Harmonised Amateur Radio Examination Certificate”』のほうだ(http://www.erodocdb.dk/docs/doc98/official/pdf/TR6102.pdf などで参照可)。 こちらは3か月を超える期間の滞在者への適用が前提となる(longer than three months)〔同勧告の”recommends”の4. p.3/24〕。 主として「各国の資格の相互承認」を目指したもので、これまでの形の日本のレシプロに近い。 こちらはCEPT加盟48か国のうちで、37か国が採択している。 前項のT/R 61-01と同様に、「ヨーロッパ域外の国」がこの制度に参加することもできる。 これまでに(日本以前に)6か国が参加している(「香港」を1か国とみなして計上)。

 この制度は勧告のタイトルにもあるとおり『HAREC』と略される。 『HAREC』自体はライセンスではなく証明書だ。 すでにある各国の資格が、「HARECに値するもの」として扱われる(ゆめゆめ「HAREC試験」などはない)。 このHARECは、たとえば日本でいうと四アマから一アマのすべてに対して発行されるわけではない。 T/R 61-02の内容を満たした資格の所持者のみに発行される。

 たとえばイギリスでは、下から、以下のクラスがある。

 

 ●Foundation Licence

 ●Intermediate Licence (B) … 50MHz以上のみ

 ●Intermediate Licence (A) … 5WPMの電信の試験あり

 ●Full Licence (B) … 30MHz以上のみ

 ●Full Licence (A) … 5WPMの電信の試験あり

 

 これらのうち、「Full Licence」の所持者だけが『HAREC』をもらい受けることができるのだ。 ちなみにイギリスでの『HAREC』の発行元は『OFCOM』(Office of Communications、英国情報通信庁)になる。 様式は、基本は定められている(後述)が、各国個々のレター様式のものである。

 

 さて現在、日本を迎え入れるための検討は、CEPT下で、

 

 ●ECC (Electronic Communication Committee) の

 ●WGFM (Working Group Frequency Managemnet) の

 ●RAFG (Radio Amateur Forum Group)

 

で進められている。

 とくに前回5月の会合の成果として『FM(14)117_Annex 23 Amended ERC Rec. TR 61-02』というドキュメントが出されているが(http://www.cept.org/ecc/groups/ecc/wg-fm/client/meeting-documents の「80th WGFM – May 26 – 30, Trondheim, Norway」の「Minutes and Annexes」下)、『一アマ』だけがこの対象に含まれる方向となっていることが判る。

 

 

revised-table2

 

“RAFG progress report is submitted to WGFM#80” (http://www.cept.org/ecc/groups/ecc/wg-fm/fm-radio-amateur-fg/page/rafg-progress-report-is-submitted-to-wgfm80)から、

「to accept Japan, as a first step, with its national first class radio amateur operator licence to CEPT Recommendation T/R 61-02」

 

“Results of the 80h WGFM Meeting in Trondheim, Norway, 26-30 May 2014” (http://www.cept.org/ecc/groups/ecc/wg-fm/client/introduction/news/results-of-the-80h-wgfm-meeting-in-trondheim,-norway,-26-30-may-2014)から、

「first class radio amateur operator licence of Japan

Next Meeting of WG FM
6-10 October 2014 – 81st WG FM Meeting in Sophia-Antipolis, France.」

 

 最後の引用文のとおり、10月以降に次なる動きがあるかもしれない。

 

 HARECの所持者が、勧告T/R 61-02の採択国を訪れた場合、それを示せば、その国の試験を受けることなく免許を受けることができる。 肝心な「その国のどの資格に該当するのか?」は、勧告内に示されている。ということで言い換えれば、T/R 61-01とは異なって、「ぷらっと」他の国に行って即オンエアできる性格のものとは言えない。 しかし、これまでの日本の相互運用協定(いわゆるレシプロ)は、すべて二国間の協定(バイラテラル)だった。 今回の「いわゆるCEPT」は、そんな“亀の歩み”の各個撃破とは大きく異なり、採択している国「37か国+ヨーロッパ域外6か国」を一網打尽にできるものだ。

 

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