既報のとおり総務省は、中波の475.5kHz帯(472~479kHz)をアマチュア無線用として2015年の年初に開放することを視野に、「アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別を定める告示の一部改正案等に対する意見募集」という告知を7月31日に掲載、9月1日まで広く意見(パブリックコメント)を募集している。ところが、その中で示された「電波法関係審査基準」という訓令の改正案に「475.5kHz帯については、当該無線局の設置場所又は運用場所から200mの範囲内に建物が存在しないものであること」という条項が盛り込まれていることが判明、その“ハードルの高さ”に波紋が広がっている。
475.5kHz帯のアマチュアバンドは、世界的な無線通信規則の改正を審議するWRCやその準備会合で2008年から検討されてきたものだ。ようやく日本国内でのバンド割り当て(二次分配)に目処が付き、このほど最終段階として総務省がパブリックコメントの募集を行うところまで来た。順調に進めば2015年1月5日にはバンド開放となる見込みだ。
ところが、この周波数帯は近接する既存の無線局(航空無線航行業務など)への混信や、2倍・3倍の高調波が中波放送バンドと重なることから(例えば関東地方の場合は、2倍高調波が954kHzのTBSラジオ、3倍高調波が1422kHzのアール・エフ・ラジオ日本と重なる)、その防止のため、出力をEIRPで1W以下とするほか、訓令の電波法関係審査基準に「放送の受信の保護」として、次のような文言が追加されようとしていることがわかった。
「475.5kHz帯の周波数の電波を使用するものについては、当該無線局の設置場所又は運用場所から200mの範囲内に住宅、事業所等の建物(自己の所有又は管理する建物を除く。)が存在しないものであること。ただし、当該範囲内の建物の所有者又は管理者から了解が得られている場合は、この限りでない。」 (電波法関係審査基準の一部を改正する訓令案より)
これは135kHz帯に適用されている「鉄道線路からの距離が100m以内の場合は、距離に応じて出力(EIRP)を制限」といった訓令よりも厳しいものだ。
この改正案について、アマチュア無線家の間からは「半径200mの範囲内に建物がない場所で、アマチュア無線をやっている人がどれだけいるのか?」「8エリア以外は難しいだろう」「200mの範囲にある建物の数を数えたら、軽く100軒を超えた。全部から了解を取るのはとても無理」「了解を得る方法がわからないが、全戸の承諾印が必要ならハードルが高い」「常置場所からの運用は諦めざるを得ない。条件に合う場所からの移動運用のみとして免許発給してもらえないか?」などといった感想や意見があがっている。
「アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別を定める告示の一部改正案等に対する意見募集」は9月1日(月)17時まで受け付けとなっている(郵送の場合は同日必着)。この電波法関係審査基準の改正案について、どのような意見が寄せられるか、またそれに対して総務省がどのように判断するかに注目が集まっている。
●関連リンク:総務省 アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別を定める告示の一部改正案等に対する意見募集
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