今まで消防救急業務に割り当てられていた150MHz帯アナログ波は、周波数帯域がひっ迫した状態であることなどから、総務省は平成15(2003)年10月に電波法関係審査基準を改正し、平成28(2016)年5月31日までに260MHz帯デジタル波に移行することになった。きょう5月31日、40年以上にわたり広帯域受信機などで受信できた消防・救急の150MHz帯アナログ波が完全停波する。
消防救急業務による無線システムについて、旧郵政省時代にデジタル・ナロー化の検討要請があり、全国消防長会、消防庁、メーカーなどの関係者による検討がスタート。その結果、アナログ波による150MHz帯の割り当てを平成28年5月31日までに260MHz帯デジタル波に移行することが決定され、全国の自治体で配備の準備が行われた。
デジタル化により多チャンネル化が図られると共に、音声以外に文字情報や車両動態表示、映像など様々なデータ通信などが行えるメリットがある。
一方、周波数帯で比較すると通信エリアが半分程度になると言われている。通話範囲が狭くなった分は中継局を設置することでカバー。新しい機器の配備で膨大な費用がかかることから、周辺の市町村が消防組織を統合し、指揮命令系統の一元化を図る「消防の広域化」も進んだ。
受信ジャンルの1つとして広帯域受信機はもちろん、受信改造を施したアマチュア無線機でお手軽に聞けることから多くのファンに親しまれてきた、150MHz帯の消防救急無線。ついに停波の“Xデー”がやってきた。「今日は聞けるだけ聞いて記憶に残したい」「残すは航空無線だけか」と、停波を残念がるつぶやきがSNSなどで飛び交っている。
なお、災害現場での部隊連絡用として用いられる460MHz帯の「消防署活系無線」は、今後もアナログ波のまま存続。中規模の自治体のなかには260MHz帯デジタル波の運用開始と合わせて、新たに460MHz帯の消防署活系無線(アナログ)を導入したところもある。さらに消防ヘリコプターの連絡波(カンパニーラジオ)なども従来どおり存続する。消防無線が完全に受信ジャンルから“消え去った”わけではないことを理解しておこう。
●関連リンク:
・消防消第141号(PDF形式)
・総務省 消防救急無線のデジタル方式への移行過程における広域応援時の通信手段確保に関する検討会報告書(消防救急無線のデジタル方式への移行過程における広域応援時の通信手段確保に関する検討会/PDF形式)
・関東総合通信局 消防・救急無線
・消防無線(ウィキペディア)
・消防救急デジタル無線専用受令機(SCPC方式)(株式会社エーオーアール)
・消防救急無線通信システムのデジタル化推進(社会的課題解決に貢献するNECの事業活動特/PDF形式)
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