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<新スプリアス規格の技適に合格した8ch 500mW機>話題の新ポータブル市民ラジオ「SR-01」の開発現場を訪問!! (その1)

2016年4月18日、静岡県浜松市のメーカー「株式会社サイエンテックス」が、新スプリアス規格に対応した27MHz帯AMモードの市民ラジオ無線機(8ch 500mW出力)「SR-01」の開発を発表した。これはライセンスフリー無線の愛好者に大きな驚きを与え、1台138,000円(税込み)という価格にもかかわらず同社には予約が殺到、初回ロットの100台はたった1日で、続く第2ロットの100台も1か月足らずで埋まってしまったという(現在は第3ロット出荷分を予約受付中)。そこでhamlife.jpでは同社を訪問し、開発担当者にSR-01の商品企画のいきさつや製品の特徴などを取材した。その第1回目を紹介しよう。

 

 

サイエンテックスが開発した27MHz帯市民ラジオ無線機「SR-01」試作品。フロントパネルはチヂミ塗装に似た梨地風で高い質感を醸し出している

サイエンテックスが開発した27MHz帯市民ラジオ無線機「SR-01」試作品。フロントパネルはチヂミ塗装に似た梨地風で高い質感を醸し出している

 

 

★ライセンスフリー無線の現状と市民ラジオの事情

 ライセンスフリー無線の愛好者は現在、大きく3つのカテゴリーの無線を楽しんでいる。ひとつは420MHz帯で10mW出力の「特定小電力無線(特小)」、もうひとつは351MHz帯で最大5W出力の「デジタル簡易無線登録局(デジ簡)」、そして3つめが27MHz帯AMで最大500mW出力の「市民ラジオ(合法CB)」だ。このほかに903MHz帯の「パーソナル無線」も存在するが、すでに新規開局や再免許は不可能で事実上の終焉状態になっている。

 

 特小とデジ簡は現在も多くのメーカーが製品を発売しているが、27MHz帯の市民ラジオは少々事情が異なる。かつてはソニーやパナソニック(当時は松下電器産業)などの大手メーカーから製品が発売されていたが、現在は生産も終了し、運用するためにはネットオークションなどで程度の良好な中古品を入手するのが一般的だ。

 

 ところが過去に発売された市民ラジオは、どの製品も総務省が「新スプリアス規格」を定めた2005(平成17)年以前に製造された「旧技適機」であるため、そのままの状態では2022(平成34)年11月末以降は使い続けることができないのだ。
 一部の技術ある愛好者のなかには、新スプリアス規格に適合するように自力で無線機を調整・改修し、持ち込み検査を受けて新技適をパスさせたケースもあるが、一般の愛好者にとっては非常にハードルが高いことから、“新スプリアス基準を満たした合法CB機”の登場が切望されていた。

 

 

★株式会社サイエンテックスとは?

 今回、新規格をクリアする市民ラジオ「SR-01」の開発を行った株式会社サイエンテックスとはどのような企業だろうか。

 

 会社案内によると本社は静岡県浜松市で創業は1993(平成5)年。大学や研究機関向けに光関係の計測機器(微弱光測定器、光検出器、蛍光寿命測定装置、テスト光源、遮光対策品)などを開発、納入しているメーカーで、現在の資本金は6,400万円。経産省関東経済産業局から「新事業活動促進法 新連携認定企業」に指定されたほか、2011年にはISO9001:2008の認証を取得している。
 取引先には「スーパーカミオカンデ」で知られる東京大学宇宙線研究所をはじめ、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、核融合科学研究所、科学技術振興機構など著名な大学や研究機関がズラリと並んでいた。

 

浜松市内にある株式会社サイエンテックスの新社屋

浜松市内にある株式会社サイエンテックスの新社屋

 

 

★SR-01開発の経緯

 hamlife.jpのスタッフは5月中旬、浜松市内の新社屋に移転したばかりの同社を訪問し、SR-01の開発を担当した技術部長の吉澤優一氏に話を聞いた。

 

 吉澤氏は1997年にアマチュア無線局を開局。当時は50MHz帯やHFの運用を楽しんでいたが、ここ3~4年前にオークションでソニーの合法CB機「ICB-870T」を入手したことをきっかけにライセンスフリー無線を楽しんでいるという。「学生時代に始めた無線趣味が高じてエンジニアになりました。無線で覚えた技術がこれまでの仕事でも役に立っています」と述べている。

 

SR-01の試作機と各種資料を前に説明する技術部長の吉澤優一氏

SR-01の試作機と各種資料を前に説明する技術部長の吉澤優一氏

 

 同社はこれまで、光関係の計測器の開発を行ってきたが、吉澤氏は2016年に入ってから従来とはまったく別の分野として、これまでの趣味を通じて「一定の需要はあるが、製品がない状態」であることを知っていた、市民ラジオの無線機開発を会社に提案したという。この提案に対して上司は「やってみよう!」と決断してくれたという。

 

 吉澤氏は「当社は少人数(7名)のスタッフでやっていますが、うまいことに回路設計、筐体、組み込みソフトウエア、パターン設計、外装デザインなど、それぞれの担当分野が分かれています。つまり人数は少ないが機動的な開発ができるのです。おそらく市民ラジオのような製品は、大手メーカーだと小回りがきかずに費用が掛かってしまうでしょう。かと言って1人だけで作るとしたら時間がかかりすぎて実現できないかもしれません。ちょうど良い規模でフットワーク良い開発が行えたことで、SR-01を発表できました」と振り返っている。

 

SR-01の試作機。メーターをはじめアンテナ折り曲げ部分の機構など多くのパーツはこの製品のために特注されたものだという

SR-01の試作機。メーターをはじめアンテナ折り曲げ部分の機構など多くのパーツはこの製品のために特注されたものだという

 

 

★市場調査を兼ねてWebサイトで予約開始

 とは言っても「実際に何台注文が来るかは、まったく見当がつきませんでした」という。「むしろ“市場調査のしようがなかった”と言ったほうが良いかもしれませんね」。そこで吉澤氏が取ったのは「仕様が固まった段階でWebサイトで告知を行い、実際に予約を取ってしまう」という大胆な方法だった。「もし購入希望者が少なくても、我々ならたとえ数台であっても生産し、ご注文いただいた方に納入できますから問題はありません」。ここが小回りのきくメーカーの凄さと言えるだろう。

 

 ところが想定外のことが起きた。Webサイトで告知を始めたところ、わずか24時間で110件もの予約注文が入ったのだ。「これは驚きました。中にはお一人で複数台の注文をくださったお客様もいらっしゃいます」。ただその場合は“なるべく多くの愛好者に、まず1台目を届けたい”という考えから、2台目以降の注文は分納ということを検討しているという。

 

 また「設計、製造からエンドユーザーへの販売まで、すべてを自社で行ってこそサイエンテックスである」「エンドユーザーからの意見を製品に反映させる」という、会社と出資しているベンチャーキャピタルの方針があることから、SR-01の販売は同社による直接販売のみとするという。

 

 吉澤氏によると、SR-01の開発はスケジュール通りに進んでおり、試作機の第一陣(2台)は6月16日に技適の検査を無事クリアし、送信ができる状態になったという。気になるスプリアスだが、「新スプリアス基準に対して、電波の質について十分に数値の余裕を持って合格となりました」ということだ。

 

 今後は今週末の6月25日(土)に東京・秋葉原で行われるライセンスフリー無線の愛好者のイベント「CBersカンファレンス2016」会場をはじめ、7月の「関西アマチュア無線フェスティバル(KANHAM2016)」のFREMブースでもSR-01を展示。さらに8月の「ハムフェア2016」では会場内にサイエンテックスが企業ブースを出展しSR-01の展示とPRを行う予定だ。

 

最初に技適を通過したSR-01試作機の底部と背面、製品版では一部変更される可能性もあるという

最初に技適を通過したSR-01試作機の底部と背面、製品版では一部変更される可能性もあるという

技適をクリアした証のステッカーが張られた、SR-01試作機の後部パネル

技適をクリアした証のステッカーが張られた、SR-01試作機の後部パネル

 

 

 

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<本邦初!新スプリアス対応、技適取得済み「SR-01」実働機を展示>6月25日(土)、東京・秋葉原で「CBersカンファレンス2016」開催
https://www.hamlife.jp/2016/06/20/sr01-cbers-conference2016/

 

 

 

●関連リンク:新技適対応 市民ラジオ(SR-01)発売のお知らせ(サイエンテックス)

 

 

 

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