総務省は「周波数再編アクションプラン(平成29年度改定版)案」を作成、2017年9月29日から10月27日まで意見募集を行った。同案では2~30MHzで「無線局への影響に配慮しつつ、具体的なサービスニーズを検証するための屋外等での広帯域電力線搬送通信設備の実験を推進し、無線システムとの共存条件や技術的条件の検討を進める」という“PLC屋外実験推進”の方針が示されたが、一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)はこれに強く反対する意見を提出した。しかし11月10日に公表された改定にこの意見は反映されず、PLC屋外実験が事実上推進されていくことになった。
総務省は、電波の利用状況調査の評価結果等に基づく、具体的な周波数の再編をフォローアップするための具体的な取り組みを示すため、平成16年度から毎年「周波数再編アクションプラン」を策定し公表を行っている。
今回は、平成28年度に行った「電波の利用状況調査(714MHz~3.4GHzを対象)」の評価結果を踏まえて「周波数再編アクションプラン(平成29年度改定版)」を策定することになり、9月28日に改定案が公表、2017年9月29日から10月27日まで意見募集が実施され、11月10日にその結果とともに「周波数再編アクションプラン(平成29年11月改定版)」が正式に公表された。
9月28日公表の改定案では、これまでに確立された方針や検討の経過等を踏まえ、「ワイヤレスブロードバンド環境の実現に向けた周波数の確保、周波数移行方策及び移行時期等」の検討と見直しを中心に行うとし、「第5世代移動通信システム(5G)等の円滑な導入に向けた対応 」「5GHz帯無線LANの周波数帯拡張等に向けた対応」「超高精細度テレビジョン放送(4K・8K放送)の実現に向けた対応」「2020 年に向けた電波利用環境の整備 」などの重点取り組みと、各周波数区分の再編方針が示された。
この中で、335.4MHz以下の周波数における具体的な取り組み(制度整備等)の1つとして「PLC(広帯域電力線搬送通信設備)の屋外実験推進」が盛り込まれた。
広帯域電力線搬送通信設備(2~30MHz)
・広帯域電力線搬送通信設備については、屋外での実験制度を平成16年に導入しているが、近年実用化を志向した取組が活発化している。これを踏まえ、IoTの進展により増加・多様化する無線システムとの共存が可能となるよう、無線局への影響に配慮しつつ、具体的なサービスニーズを検証するための屋外等での広帯域電力線搬送通信設備の実験を推進し、無線システムとの共存条件や技術的条件の検討を進める。
改定案に対しJARLは“PLCの屋外利用は絶対反対”とする従来の立場から、「広帯域電力線搬送通信の屋外における利用は、短波帯の無線システムに妨害を与える可能性が高く、電波環境を著しく悪化させるおそれがある。通信伝送路でもない特性の定まらない電力線に 2~30MHz にもおよぶ高周波信号を重畳させること自体が不要輻射の主因でもあり、アマチュア無線を含む既存の無線システム保護の観点から重大な懸念を抱いており、当連盟はこの推進に強く反対いたします」という意見を提出した。
しかし総務省は「頂いたご意見については、今後の施策の検討の際に参考とさせていただきます」とし、「なお、広帯域電力線搬送通信設備については、近年実用化を志向した取組が活発化していることを踏まえ、IoTの進展により増加・多様化する無線システムとの共存が可能となるよう、無線システムとの共存条件等について検討を進めて参ります」と、JARLの意見を改定に反映しないとする回答を行った。
今回の意見募集には個人と団体などから29の意見が提出されたが、PLCに関するものはJARL以外に反対意見が1件(個人)あるのみだった。また個人からはこのほか、「広く国際的にも使用されている27MHz帯の外国規格の無線機(FRS・GMRS)の使用開放を求めます」とする下記のような意見も提出されたが、改定には反映されなかった。
詳細は下記関連リンク参照のこと。
●関連リンク:
・「周波数再編アクションプラン」の見直しに係る意見募集(総務省 9月28日)
・周波数再編アクションプラン(平成29年度改定版)案 PDF(総務省 9月28日)
・「周波数再編アクションプラン(平成29年11月改定版)」の公表(総務省 11月10日)
・「周波数再編アクションプラン(平成 29 年度改定版)案」に対する意見募集の結果及び意見に対する考え方 PDF(総務省 11月10日)
・「周波数再編アクションプラン(平成29年11月改定版)」(総務省 11月10日)
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