一般社団法人 日本民間放送連盟(ラジオ、テレビ、兼営局など民間放送事業者207社が加盟)は、中波でAMラジオ放送を行っている民放各局(47局)が、VHFの「FM補完放送」へ転換・一本化が行えるようにする制度改正を総務省に求める方針を固めた。3月22日に共同通信社などが報じた。2028年までの制度改正を求め、実現した場合は将来的に民放AMラジオ放送の多くが中波送信を廃止する可能性がある。
現在、大多数の民放AMラジオ局が「都市型難聴対策」「外国波混信対策」「地理的・地形的難聴対策」「災害対策」として、VHFの90.1~94.9MHz(2011年で終了したアナログテレビ放送の1~3chが使用していた周波数の一部)で、中波と同一プログラムをFMステレオでも放送する補完放送(FM補完放送、愛称:ワイドFM)を実施している。
しかし報道によると、AMラジオ放送を行っている民放各局は広告収入の低迷で経営状況が悪化している。また送信所(中波)の設備更新時期を迎えている局も多い。そこで中波とVHFの2波で同時放送を行うコストを軽減するため、設備更新や維持管理に大きなコストがかかる中波を廃止し、FM補完放送に送信が一本化できる制度改正を総務省に要望することになったという。
放送局の免許有効期限は5年(一斉更新)で、民放局が現在受けている免許は2023年までとなっている。制度改正には長期的な検討や準備が必要なことから、その次の免許更新時期となる2028年までの実現を求めるという。
ただしサービスエリアの立地条件や経営方針など、局ごとに事情があるため、47局すべてが2028年をもって一斉に中波送信を廃止するわけではなく、局によって「中波(AM)とVHF(FM補完)の2波併用を続ける」「VHF(FM補完)のみにする」という選択ができるような制度を要望する見込みだ。
この要望は、3月27日(水)10:30から総務省で開催される有識者会議「放送を巡る諸課題に関する検討会」の放送事業の基盤強化に関する検討分科会の議題「AMラジオのあり方について」の中で民放連代表が表明する予定だ。会議は事前申し込みで一般人も傍聴可能となっている。
このニュースが伝わると、SNS上では「AMとFMの2波を出しているから“災害に強いラジオ”なのに」「東日本大震災では仙台のFMラジオ局は停止したがAMラジオ局は生きていた」「FM補完放送が聞こえるラジオはあまり普及していないから、かえってAM局離れにつながるのでは?」「自作のゲルマニウムラジオでAM放送を聞くことができなくなるのか」「山間部でFMは聞こえない」「夜に遠くの局が聴けるのがいいのに」など、さまざまな意見が飛び交っていた。
また民放関係者からは「検討会の結果を待ってから、冷静に報道してほしかった」「背景には複雑な問題がある。“放送自体をこれからどうしていくか”を考えていかなければならない時期に来ている」といった意見も聞かれた。
●関連リンク:
・放送を巡る諸課題に関する検討会(総務省)
・放送事業の基盤強化に関する検討分科会 開催案内(総務省)
・AMやめFMに転換することも可能な制度改正要請へ 民放連(NHKニュース)
・民放連 AMラジオ、FM転換を要請(日経電子版)
・AM放送やめられるよう民放連が要請へ 本音は…(朝日新聞デジタル)
・AMラジオ局をFM転換 民放連、制度改正要望 設備更新がコスト高(産経新聞)
・一般社団法人 日本民間放送連盟
・FM補完中継局(Wikipedia)
・ラジオはあなたとともに。FMで伝えます。FMでも伝えます。(総務省)
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