hamlife.jp(ハムライフ・ドット・ジェーピー)
一般社団法人 日本アマチュア無線連盟

注目キーワード:

hamlife.jp > 特集/企画/連載 > 連載 > 外国のコールサイン取得 > 【特別寄稿】日本に居ながらにして外国のコールサインを取得! Part1「4アマでもOK、こちらはアイルランド『EI2KT』です」編


【特別寄稿】日本に居ながらにして外国のコールサインを取得! Part1「4アマでもOK、こちらはアイルランド『EI2KT』です」編

日本でアマチュア無線技士の資格を持つハムが、海外から運用する場合に役立つのが、相互運用協定である。現在、アメリカやカナダ、ドイツ、フランス、オーストラリア、ニュージーランドなど11か国と結び、バカンスや海外出張を利用して運用を楽しんでいるJAハムも少なくないだろう。一方、それ以外の国や地域からオンエアーするとなると、ハードルが高くなる。今回、アメリカのエクストラ級の資格を持つ鈴木康之 静岡大学大学院工学専攻教授(JR2BEF/JA9OMT)に、日本に居ながらにして外国のコールサインを取得できた!という方法を寄稿してもらった。全部で5か国(地域)を順次紹介する。Part1は「こちらはアイルランド『EI2KT』です」編だ。

 

 

海外から運用したときに用いた鈴木氏のQSLカードの一部。世界6大陸、30か国(地域)からのオンエアー実績があるという

 

 

 私は、1988年にアメリカのFCCアマチュア無線資格であるノビス級(最下級)で「KC6BKZ」のコールサインを取得。そのあと何度かの挑戦で、1991年に最上級のエクストラ級に到達し、「WR1J」のコールサインを持っています。

 

 当時、アメリカエクストラ級資格はアマチュア無線の世界で世界最強の資格の1つとも言われ、操作範囲は広く強く、コールサインは短く、アメリカ以外の国(例えばカリブ諸国)で運用を希望したとき、日本のアマチュア無線技士の資格では見向きもされないような場所からでも運用の許可が下りたりと、それは重宝しました。具体的には1991年にカリブ海の島、バルバドスから「8P9CA」で免許をもらって運用したこともあります。

 

 やがてルールの変遷の末に、私のようにアメリカの市民権を持たない者、またアメリカに住んでいない者がアメリカの資格を元にさらに第三国の許可を得ることが難しくなりました。

 

 そこで1997年に中国に返還される前のイギリス領香港で筆記試験を受け、もう1つの世界最強アマチュア無線資格と言われていたイギリスの資格取得に挑戦。やがて「M1DVF」というコールが下り、2000年の渡英の際に、現地や周辺国から運用を行っています。

 

 そのあとは外国からの運用についての熱が下がり、しばらくはQRTの状態となりました。

 

 

2000年にイギリスのコールサイン「M1DVF」でスペインからオンエアーしたときのQSLカード。セカンドクラスの資格だったため、「EA7/」「EA9/」のコールサイン表示ではない

 

 

急な渡欧計画発生

 

 現在の職について、しばらくは海外出張の話しもなく平穏に過ごしていたところ、2018年秋に急に欧州出張の話が持ち上がりました。もちろん仕事で出張するわけなので、仕事のことを考えているだけで良かったのですが、何やら急に無線の熱がぶり返して、「せっかく久しぶりに海外に行くのでハンディ機だけでも持っていって電波出せたらいいな」と思い立ちました。

 

 前述のように、アメリカの資格ではアメリカ市民権のない私はその資格を元に欧州で運用することはできません。イギリスの資格を元に…といろいろ探してみたものの、「M1DVF」の免許がどこをどう探しても見つかりません。

 

 諦めかけていたとき、「日本がCEPT(欧州郵便電気通信主管庁会議) T/R 61-02に参加する」という情報をつかみました。これは、長期滞在者を対象したアマチュア無線資格者の相互認証というルールです。

 

 CEPT関係についてはほかの方の情報(例えば「JJ1WTL本林OMの特別寄稿」や「JH4RHF田中OMのサイト」など) が詳しいので譲るとして、ようは「日本の第1級アマチュア無線技士の資格を持っていると、欧州内CEPT参加国のその国の国家試験に合格しているということ同じで、そのほかの条件が揃えば当該国の市民と同様に“ポータブル表示ではないコールサインを取得することも可能」と言い換えられる制度です。私は1アマなので、この制度を使わない手はありません。

 

 

ビザの壁とシェンゲン協定

 

 しかし、前述の「その他の条件」ということがなかなか厳しい。例えば、フランスで外国人がポータブル形式ではない現地と同じコールサインを取得するためには、3か月以上滞在可能なビザ(査証)を取得したうえで、現地に住み、住まいの公共料金(ガスや電話など)の領収書をコールサイン申請書に添付しなければなりません。

 

 仮にこの条件を満たすと、「F4W**」というコールサインがもらえます。フランスにはバニティコール(好きな文字列を指定できる)のシステムはありません。できれば「F4WRJ」など発給してもらえれば私的にはうれしいのですが、流石にそれは無理です。

 

 

フランスで3か月以上滞在する場合の長期免許申請に必要な条件。ここに記されているものを申請書に添付する。簡易的に日本語化すると「試験地が明記されているHAREC(統一アマチュア無線試験証明、日本の場合は1アマだけが取得できる)のコピー」「英語かフランス語で書かれ、有効期間が明記されている、母国の免許の証明」「公共料金の領収書など、フランスに3か月を超えて滞在するためのエビデンス」「パスポートなどの身分証明書の写し」となる

フランスで外国人がアマチュア無線の開局を希望する場合の要件。半分より上が滞在3か月未満のいわゆる短期免許で、「F/JJ0RHL」のような形で指定される。半分より下が長期免許で、日本国籍者は「C」のカテゴリーの資格「F4W**」となる

 

 

 フランスのように、条件を付ける国は調査の結果ほとんどでした。ビザが必要だったり納税者番号が必要だったりと、もちろん長期滞在する方には簡単に準備できるでしょう。しかし、ちょっと出張で訪問する程度では、なかなか準備できるものではありません。

 

 フランスをはじめとしてCEPTに参画する多くの国は、シェンゲン条約を批准していて、短期な滞在の場合はパスポートコントロールさえ受けないという利便性がある半面、長期滞在にはビザが必要という制度になるわけです。もちろんごく一部の“日本に居ながら”な人のためにあるビザ制度ではないため、シェンゲン条約そのものについてどうのこうのいう趣旨はありません。

 

 しかし、欧州(本稿のシリーズの場合、トルコとキプロスは便宜上欧州の一部としてまとめて記述しています)のCEPT加盟国の免許制度をしらみつぶしに当ってみると、なんとビザなしで免許が貰えそうな国がいくつか見つかりました。

 

 その1つが、アイルランドです。アイルランドは、イギリスと同様でシェンゲン条約を批准していないのがミソでした。前置きが長くなりましたが、今回はそのアイルランドを取り上げます。

 

 

JAの4アマでもOKなアイルランド

 

 アイルランドと聞いて、何やらピーンときた方もいらっしゃるでしょう。アイルランドは早い時期から、日本との両国間で相互運用協定を締結していて、手続き上は日本の第4級アマチュア無線技士の資格を持つ無線従事者でもアイルランドからの運用が可能になります。

 

 ただし、具体的にどのように手続して良いのか、よくわからなかったので、私の場合は、相互運用協定ではなくCEPT制度による「現地の方と同様のコール」に挑戦しました。あまりにも情報がなく、わからなければ聞けばよい!ということで、アイルランドの無線連盟に相談メールを出したところ、日本の総務省通信局に相当する「ComReg(Commission for Communications Regulation )」という事務所の連絡先と担当者を紹介してもらいました。

 

 まずはビザ不要で免許が下ります。要件を満たしていれば国籍を問わない、という画期的なものでした。

 

 

① 2×2コール(例えば「EI2KT」)になる場合
 HAREC証明とモールスの技能証明(モールス技能に関しては「その2」で詳述します)。

 

②2×3コールでサフィックス3文字目が「B」(例えば「EI2KTB」)
 HAREC証明のみ(その後モールスの証明が得られるとコール変更可能)。

 

③2×3コールでサフィックス1文字目が「V」(例えば「EI2VKT」)
 ただし、最長1年有効で更新できない。
 HAREC証明もない場合(日本の第2級~第4級アマチュア無線技士はこれに相当、免許の英文証明必要)。

 

 

 つまり③の条件であれば、日本の4アマのハムでも申請すればアイルランドのコールサインを発給してもらえることになるわけです。

 

 

超お手軽に数日でコールサインをゲット!

 

 私の場合、出張で訪問するダブリン市内の大学のアドレスで申請をすれば、もし免許申請上のことで何か齟齬が見つかってもすぐに連絡がつきますから…と、最初は申請用に昼間の住所を準備しました。

 

 ところが、現地担当官のメールのレスポンスが驚くほど良くて、返信するとメールが届くといったチャットのノリでやり取りが進みました。ですから、疑問点はすべて解決できると踏み、大学アドレスではなく大学で手配していただいた宿舎のアドレス(夜間実際に電波を出すであろう基地としての住所)で申請をしました。

 

 免許手続きの実際は、日本で言う「総務省 電波利用 電子申請・届出システム Lite」のようなサイト(ComRegのe-Licensingサイト)を使って行います。日本と違うのは、①ID取得のため葉書が到着するまで待つ必要がない(免許の交付もネット上だけ。紙によるやり取りがない) ②申請料はクレジットカード決済できる(手数料と送金時間を気にしなければ銀行振込とかもできるが、敢えてそれをする必要は認められない) ③処理が超速い…という特徴があります。

 

 私のあとに同様の申請した友人は、日本時間の夕方アカウントを開いて、翌朝にはコールサインを発給してもらいました。

 

 アイルランドでは、日本のような「コールエリア」は存在しません。私のコールは「EI2KT」ですが、その次に発給されたコールサインは「EI3KT」で、前述の私の友人は「EI3KU」でした。何か韻を踏んだ感じになるので、連名でカードを作ってみました。

 

 

日本のアマチュア無線技士の資格で下りたアイルランドの免許。左下に「EI-2KT」とある

友人と一緒に作ったQSLカード

 

 

 

 次回のPart2ではイギリス編の“日本に居ながらにして外国のコールサインを取得”を紹介します。

 

 

 

●鈴木康之氏(JR2BEF/JA9OMT)プロフィール

 

1973年 JA9OMTおよびJR2BEF開局
1988年 アメリカでノビス級「KC6BKZ」開局。そのあと「KH2EC」「AH2CH」
1991年 アメリカでエクストラ級を取得「WR1J」
1991年 浜松ノビスクラブ「7J2YAA」を主宰
1993年 ブラジルで「PS7ZWR」開局
1995年 オーストラリアで「VK2WJR」開局
1998年 イギリスで「M1DVF」開局
1999年 エジプトで「SU0ERA/WR1J」開局、自前のWAC完成!
2005年 浜松ノビスクラブのアメリカ版FB.net「KA1AA」を立ち上げ
2018年 浜松ノビスクラブ再始動。「EI2KT」「M0WRJ」「ES1ZB」を開局
2019年 キプロスで「5B4AOH」を開局

 

 

 

↓この記事もチェック!

 

【特別寄稿】日本に居ながらにして外国のコールサインを取得! Part2「一度に7種類&原則終身免許、こちらはイギリス『M0WRJ』です」編

 

【特別寄稿】日本に居ながらにして外国のコールサインを取得! Part3「電子住民申請のため在日本エストニア共和国大使館を訪問、こちらはエストニア『ES1ZB』です」編

 

【特別寄稿】日本に居ながらにして外国のコールサインを取得! Part4「ノービザ、ノーCW、電子メール一発申請、こちらはキプロス『5B4AOH』です」編

 

 

 

●関連リンク:
・海外でアマチュア無線を楽しもう!!(JARL Web)
・アマチュア無線の国際運用(ウィキペディア)
・鈴木康之-研究者(researchmap)
・こちらは EI2KT ダブリンです(日本のHARECベースで免許頂きました)
・鈴木研究室(静岡大学)

 

 

 

●おすすめ記事:

レビュー評価高い Amazonベーシック アルカリ乾電池 単3形20個パック
航空バンド&レコーダーetc.多機能ラジオ「HRD-737」