アメリカのエクストラ級の資格を持ち、世界6大陸、30か国(地域)からのオンエアー実績があるという鈴木康之 静岡大学大学院工学専攻教授(JR2BEF/JA9OMT)が、日本に居ながらにして外国のコールサインを取得できた!という特別寄稿の第4弾! 「アイルランド編(EI2KT)」「イギリス編(M0WRJ)」「エストニア編(ES1ZB)」に続き、今回は「キプロス編(5B4AOH)」を紹介する。トルコの南の東地中海上に位置するキプロスは、ノービザ、CW技能証明が不要で、「5B4」で始まる2×3形式のコールサインが発給されるエンティティーだ。
ノービザ、ノーCWで2×3形式のコールサイン発給
アイルランド、イギリスと同様に、入国を許可するために発行されるビザが必要なく、日本に居ながらにして…という条件を踏まえ、アマチュア無線局のコールサインが簡単に発給してもらえる国はないかと調査したところ、キプロス(Republic of Cyprus、発音的にはサイプラス)がノービザ、CW技能証明が不要で、「5B4」で始まる2×3形式のコールサインを得られることが判明しました。
HAREC(統一アマチュア無線試験証明)は、第一級アマチュア無線技士の資格を持つ無線従事者のみに発行されるので、1アマであればその証明書を用意してキプロスのコールサイン申請が行えます。
私の場合、2019年6月にキプロスのニコシアで国際学会が開催される予定で、これに参加することになっていたため、早めにコールサインを申請をすることにしました。結果から言うと、超簡単にコールサインを得ることができました。
コールサイン取得前に心得ておきたいこと!
キプロスのあるキプロス島には、国境や政治問題など複雑に絡み合っています。運用上の注意点として、以下を記しておきたいと思います。
①キプロス島の北半分(いわゆる北キプロス)はキプロスではない
キプロス島の南側にはキプロスを形成するギリシャ系住民が、北側にはトルコ系住民が暮らし「北キプロス」という独立国家(トルコのみ承認)を宣言。
南側からキプロスに入れば南北交通(国境検問所のようなゲートが存在)が可能ですが、先に北キプロスに入国(この場合トルコ経由のみ)してしまうと、南側には行けないばかりか、以降、ギリシャ地域の訪問などで入国拒否などの措置をされる場合があります。また、北キプロス関係局との無線交信は禁止されています。
②イギリス軍基地の島でもある
イギリス軍基地内(「ZC4」のプリフィックスエリア)では、「5B4」のコールサイン運用は当然できません。
③税関検査が非常に厳しい
地政学上やむを得えませんが、空港税関では通信機類の持ち込みにも非常に神経質な対応のようです。許可証が発行されないCEPT(欧州郵便電気通信主管庁会議)T/R 62-01ベースで運用しようとすると、どうしても危険が伴います。
連盟のサイトにも「街中や人目に付くところで無線をしていると、警察官の注目するところになります、彼らはCEPTの仕組みを知りません」的な注意書きもあります。常に用紙による免許証(ギリシャ語併記)を持参すると良いと思います。
超お手軽!申請書をダウンロードして記入後はメールで
アマチュア無線の免許申請は、「CARS(キプロスのアマチュア無線連盟)」のWebサイトをチェックすればすべての情報が確認できます。
同Webサイトから現地の電波監理を担う「DEC(Department of Electronic Communications:電気通信部)」に提出する書類をダウンロード。必要事項を記入して、パスポートの写真部分のコピーと、前述のHARECな証明書を添えてメール申請するだけでOK。「CWの技能証明は不要」です。
キプロスのアマチュア無線の免許証は、すべて「免許された年の12月31日まで有効」という最長1年免許。毎年の更新が可能です。フル期間の免許申請で費用は1つのコールサインあたり50ユーロ(約6,300円)です。
申請料は、免許の処理が始まると間もなくメールで届く請求書によって支払います。クレジットカードでの納付ができて簡単です。
1年間の途中、例えば6月に免許証が発行された場合、年末まで6か月間しかないので申請料が月割りのように安くなります。毎年12月になるとDECから各免許人にメール連絡が発出されて「更新する?」「来年分のお金払ってください」ということになります。
私の場合2018年11月末に申請を行いました。すぐ担当者から連絡がきて、「今日付けで今年分の免許を出すことは可能、その場合は即更新手続きが必要。待てるのだったら1月1日付免許にすることもできるがどうする」と聞かれました。一刻一秒を争うケースでもありませんから、担当者の提案通りに「1年間のフルで…」という返事をしました。
申請料をクレジットカードで支払い、年の瀬を迎えた12月28日に「年明けから有効、年内は無効だから気を付けて」というリマークスが添えられて免許の電子版が到着しました。
免許証はA4判で12ページに及ぶ
私には「5B4AOH」のコールサインが割り当てられました。「AAA」からのシーケンシャルで発行しているものと推測します。その免許証はA4版12ページ、コールサインは2ページ目と最終ページで確認できます。ギリシャ語と英語が併記です。以下、全ページを紹介しましょう。
※免許地や免許番号など一部を加工しています。また年明け早々にキプロスから直接私の自宅に紙版の免許証が到着しました。なにも言わなくても日本に送ってくれるとは驚きです。
※クリックすると画像が拡大します。
全12ページの免許証(状)ということは、以前、私がJJ0RHLのコールサインで取得した、信越総合通信局からの「全10枚組」(2018年2月26日記事)が“枚数では世界記録かも!”と思っていましたが、今回のキプロスの免許証のほうが2枚多ったことになります。
<免許人による手記を掲載!!>日本初!?「10枚組み」のアマチュア局免許状が発行に
次回のPart5は、ジブラルタル編の“日本に居ながらにして外国のコールサインを取得”を紹介します。
●鈴木康之氏(JR2BEF/JA9OMT)プロフィール
1973年 JA9OMTおよびJR2BEF開局
1988年 アメリカでノビス級「KC6BKZ」開局。そのあと「KH2EC」「AH2CH」
1991年 アメリカでエクストラ級を取得「WR1J」
1991年 浜松ノビスクラブ「7J2YAA」を主宰
1993年 ブラジルで「PS7ZWR」開局
1995年 オーストラリアで「VK2WJR」開局
1998年 イギリスで「M1DVF」開局
1999年 エジプトで「SU0ERA/WR1J」開局、自前のWAC完成!
2005年 浜松ノビスクラブのアメリカ版FB.net「KA1AA」を立ち上げ
2018年 浜松ノビスクラブ再始動。「EI2KT」「M0WRJ」「ES1ZB」を開局
2019年 キプロスで「5B4AOH」を開局
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【特別寄稿】日本に居ながらにして外国のコールサインを取得! Part1「4アマでもOK、こちらはアイルランド『EI2KT』です」編
【特別寄稿】日本に居ながらにして外国のコールサインを取得! Part2「一度に7種類&原則終身免許、こちらはイギリス『M0WRJ』です」編
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●関連リンク:
・海外でアマチュア無線を楽しもう!!(JARL Web)
・アマチュア無線の国際運用(ウィキペディア)
・キプロス(ウィキペディア)
・勧告 T/R 61-02 統一アマチュア無線試験証明書(CIC:JJ1WTL 本林氏のブログ)
・鈴木康之-研究者(researchmap)
・鈴木研究室(静岡大学)
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