毎年ゴールデンウィークの5月5日頃には、南極・昭和基地のJARL局「8J1RL」が日本の高校生以下のアマチュア無線局と優先的に交信するイベント「こどもの日特別運用」が21MHz帯SSBで行われている。2019年5月5日(日・祝)、東京都豊島区南大塚の一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)事務局には、公募で選ばれた小・中・高校生9名が集合しJARL中央局「JA1RL」の無線設備で南極との交信に挑戦、4アマの2名を含めた全員が成功した。子供たちの交信成功は2年ぶり。
【5月9日10時:「こどもの日」に撮影された昭和基地の写真など3点を記事内に追加しました】
南極・昭和基地に設置されたJARL局「8J1RL」は毎年5月5日頃に「こどもの日特別運用」を行い、日本の小・中・高校生が開設したアマチュア無線局(個人局、社団局)との優先交信を21MHz帯SSBで行っている。
JARLは、この「こどもの日特別運用」に合わせて、東京・大塚の本部に設置した中央局「JA1RL」の無線設備を使って8J1RLとの交信を希望する子供たち(アマチュア無線の有資格者)の公募を行っているが、今年は選ばれた小・中・高校生の9名(小学2年生:1名、小学5年生:3名、中学1年生:4名、高校1年生:1名。資格は3アマ:7名、4アマ:2名)と保護者が集合。南極地域観測隊員のOBから南極での生活や業務内容についての話を聞いたり、スタッフから南極と日本の電波伝搬や交信方法のレクチャーを受けたりして交信への期待を高めていった。
ちなみに昨年(2018年)はコンディションに恵まれず、JA1RLの設備からは14MHz帯でかろうじて交信できるものの、参加した子供たち(3~4アマ資格の11名)が運用する21MHz帯での交信には至らず、急遽有線電話回線で会場と昭和基地と結び、観測隊員と一問一答の質問コーナーを行った(昨年の記事参照)。
今回は17時から運用スタッフが21MHz帯(21.217MHz)のSSBで8J1RLへの呼びかけを始めた。当初はノイズだけだったが、17時25分頃から徐々に8J1RLの信号が聞こえ始めた。そこで3アマの7名が1名ずつ順番にマイクを持ち、17時37分から50W機(FT-991AM)で8J1RLと子供たちの交信がスタートした。

用意されたJA1RLの無線機。左からIC-7800(200W機、運用スタッフによる14MHz帯での使用を想定)、FT-991AS(10W機)、FT-991AM(50W機)。このほか昭和基地にD-STARターミナルモードを設置してのD-STAR交信も計画されたが、21MHz帯で交信できたことから実施に至らなかった
交信内容は「RSリポートと自分の名前」の交換という形式だが、子供たちがオペレーターを交代すると、8J1RL側もマイクを握る隊員が交代するというもので、子供たちは自分の交信相手をしてくれた隊員の名前を懸命に聞き取っていた。
8J1RLの信号はQSBがあるものの、ピークの17時45分前後にはRS59で聞こえることもあったが、その後は信号が下がり始め、17時55分に7人目が交信を終える頃にはかなり状態が悪くなってしまった。
この時点で4アマの2名が未交信のため、運用スタッフが10W機(FT-991AS)に切り替える旨を伝え、10Wで8J1RLを呼び続けたが応答がなく、会場内は「このまま2人だけ未交信で終わるのか…」と次第に重苦しい空気になっていった。しかし18時15分頃からコンディションが再び上昇し信号が入感、18時22分に4アマの1人が交信に成功。残る1人も18時23分にクリアに交信。全員の交信が成功した瞬間、会場内から大きな拍手が沸き起こった。
全員の交信終了後、髙尾JARL会長は子供たち1人ずつに「交信記念証」を手渡し、「皆さんはきょう、14,000kmも離れた南極と交信ができたんですよ。最初は“この感じだと難しいかな?”と思っていましたが、粘っているうちにコンディションが上がってきて、また弱くなって、さらに上がってくるといった、電波の不思議を体験できましたね。きょうの感動を忘れないで、いろいろなアマチュア無線の楽しみに挑戦してください」と話し、運営をサポートした関係者へ謝辞を述べた。
●関連リンク:JARL南極局8J1RLのこどもの日特別運用を実施(速報)(JARL Web)
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