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今回開催される「第8回定時社員総会」のポイントを解説する。
◆ポイント1:JARLの決算について
第1号議題になっているJARLの平成30年度決算だが、元々「3,936万円の赤字」となる予算を組んでいたが、実際には「8,010万円の赤字」となってしまった。さまざまな要因があるが、昨年の予算策定時に“この1年間で正員が4,000名以上増加し、入会金と会費で収入が3,500万円以上増える”と見込んだものの、実際は会員数は増加せずに微減となり、結果として3,780万円の会費収入未達成が生じた点は無視できない(下の2つのグラフ参照)。見込みの甘さが23日の社員総会でも指摘されることは間違いなさそうだ。なお決算の可決には出席社員の過半数(129名全員が出席した場合は65名)の賛成が必要となる。
◆ポイント2:理事2名に対する解任提案について
社員有志や一部理事が指摘する「現執行部によるずさんかつ独善的な団体運営」という指摘について、有志以外の社員(108名)がどう判断するかがポイントだ。これらの指摘が事実であったとして“理事解任”という最も重い措置が必要なのか、社員の選択が注目される。hamlife.jpへは「髙尾氏と日野岳氏を解任すれば、JARLが抱えるすべての問題は解決し、会員は増えるのか。かえって混乱に拍車が掛かることにはならないか」「理事会で一般理事らが会長や専務理事に注意を与えたり、詳細な説明を求めたりすれば良い問題。突然の解任提案は違和感がある」という会員からの指摘も届いている。なお解任可決には出席社員の過半数(129名全員が出席した場合は65名)の賛成が必要だ。
◆ポイント3:決算を否決し、2名の理事を解任した場合はどうなる?
ではもし、第1号議題の「平成30年度決算」を否決し、第2号議題の「理事髙尾義則及び理事日野岳充 解任の件」が可決した場合は、どうなるだろうか。
★第1号議題の「決算」が否決された場合
決算の否決はこれまでに例がなく、JARLの定款や規定にも“否決された場合の扱い”については具体的に記載されていない。しかし決算は社員総会での承認が必要な事項であるため、もう一度決算を精査した上で社員総会への再上程が必須だ。とはいえ、“すでに使ってしまった(またはすでに入ってきた)お金”であり、監事による厳重な監査も受けていることから、よほどの計算ミスや記載漏れ、不当行為の発覚がない限り、再上程される決算額が大きく変動することはないだろう。また赤字の一部を理事らが補填するのは難しいと思われる。
★第2号議題で「理事2名(髙尾氏、日野岳氏)が解任」された場合
髙尾氏は会長であり、日野岳氏は「ただし書き理事」による専務理事(JARL事務局の管理者、唯一の常勤理事)である。そのため定款と規定により、以下①~⑤の順番で事態が動いていくと考えられる。
①会長と専務理事が“空席”になる
次の理事会で新会長が決まるまで、現副会長の森田氏(JA5SUD)と原氏(JA8ATG)が業務を代行することになる。JARL常勤の専務理事は空席となる。
②次の理事会で新会長が決定する
次の理事会において、残っている理事15名による互選(または話し合い)で新会長が選出される。しかし担当業務の性質上、新専務理事がこの理事会で同時に選出されるかは不透明だ(下記④⑤参照)。ちなみに次の理事会はJG2GFX 種村理事の招集で、各議案の可決・否決に関わらず6月23日の社員総会終了後に行われる予定だ。
③理事候補者として選挙で次点だったJA7AIW 山之内氏(前JARL会長)が繰り上がる?
全国選出理事の髙尾氏が解任された場合、規則に基づき平成30年の通常選挙(全国選出理事)で次点だった前会長のJA7AIW 山之内氏が理事候補者として繰り上がる。ただしJARLには「理事就任は80歳未満」とする覚書がある。山之内氏は1939(昭和14)年生まれで、今年80歳を迎えることから、同氏の誕生日と就任の賛否を諮る社員総会の開催日によっては就任できない可能性がある。その場合は次々点だったJA8LJF 佐々木氏(1954年生まれ)が繰り上げになるかもしれない。なお“次の通常選挙までの期間が短い”などの理由で、現理事会が「欠員の繰り上げは行わない」と決めることも可能で、1年後の定時社員総会まで欠員のままとすることも考えられる。
ちなみに、過去には在職中の理事(地方本部長)死去に伴い、残り任期1年の段階で選挙の次点者の理事就任が定時社員総会の議題になったことがある。
④JARLと理事会が「ただし書き理事」の候補者を決める
日野岳氏はJARL職員出身で、規則に定める「ただし書き理事」2名のうちの1名(事務局の管理者であって、連盟の運営上適当である者)として理事になり、事務局常勤の専務理事を務めている(報酬は年額900万円)。このため日野岳氏が解任された場合は、JARLの事務・実務関係に精通した新たな人物が「ただし書き理事候補」としてJARL側から提案され、理事会が推薦することが予想される。
⑤新理事の就任を社員総会で決議
上記③による山之内氏(または佐々木氏)と④のただし書き理事の1名は、規則に基づいて社員総会で決議(承認)を経て理事へ就任することになる。
ここで問題になるのは、④の専務理事含みの「ただし書き理事」だ。理事会で推薦された「ただし書き理事」が日野岳氏の後任として専務理事になるには、まず社員総会で理事就任の決議を受け、その後の理事会で専務理事へ就任するプロセスを歩むことになる。しかしJARLの事務・実務に精通した管理者である専務理事がいない期間が長くなると、さまざまな業務(実務)が停滞する可能性がある。
専務理事の長期空席で生じる混乱を避ける手段として、もう1名の「ただし書き理事」(正員であって専門分野における学識経験を有し、連盟の業務執行上適当である者)に就任している総務省出身で元・北海道総合通信局長のJI1DWB 大矢氏を、②の段階で専務理事に就任させる方法も奇策だが考えられる。
なおJARL規則では「専務理事になれるのは“ただし書き理事”のみ」とは規定されていない。地方選出理事(地方本部長)や全国選出理事が専務理事になることも規則上は可能だ。ただし事務局の管理者として東京・大塚のJARL事務局に常勤できることが大前提になる。
★理事会と社員総会の開催費用
このように、否決した決算をもう一度審議し承認したり、解任した理事の後任を承認したりするには「社員総会」を開き、出席社員の過半数の賛成を得る必要がある。また新会長の決定を始め、さまざまな運営方針の策定には理事会の開催が必須となっている。
社員総会の開催には、全国の社員を招集する交通費や会場費などで1回あたり約370万円かかっている。もし臨時社員総会を開催するとしたら費用も人的にも負担は大きい。同様に理事会の開催も交通費などで1回あたり40万円強がかかっている計算だ。さらにJARLのアワードをはじめとする各種の印刷物には「会長名」が印刷されている。これらの作り直しにもそれなりの費用がかかることが想像できる。
これらの点について21名の社員有志はWebサイトで次のように希望を表明しているが、この希望通りに進行するかは総会後の理事会次第である。
・現会長・専務理事解任後の執行部(理事)の皆さんが決められることですが、社員有志としては、決算否決後は、否決された決算案を精査し、不正・不当な支出があれば返還を求める等、是正を図り、修正後の決算案を来年の定時総会にかけていただくことを希望します。わざわざ臨時総会を開催する必要はないと考えます。
・解任後は、選挙で次点だった候補者を繰り上げると臨時総会での決議が必要になり費用がかかりますので、総会後の理事会で「来年4月の選挙まで欠員のままとする」ことを決めて頂きたいと考えています(ただし、他にも辞任する理事がでた場合は別になるかもしれません)。(JARL規則28条1項ただし書きと2項ただし書きは「理事会が欠員となった理事の任期の残存期間を勘案して特に決議したときは、欠員を補充しないことができる。」と定めています)
注目の「第8回定時社員総会」は、hamlife.jpでも取材を行い、逐次速報する予定だ。
●関連リンク:
・第8回定時社員総会議案等について(JARL Web)
・2019年度JARL総会情報
・JARL理事からのご回答(2019年度JARL総会情報)
・H30年度のJARL決算を読んでみよう(JJ1WTL 本林氏のブログ「CIC」)
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