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<第一電波工業がデモンストレーション>メーカーが行うハンディ機用/モービル用アンテナの測定・調整法とは?

前ページからの続き

 

◆Special Session:モービル用アンテナの測定と調整について

 

 

 続いて同社スタッフが「ここからは参考程度ですが…」として、144/430MHz帯のモービルホイップアンテナ「CR-77」(144MHz帯は1/4波長型、全長29cm)を、先ほどと同じ市販のアンテナアナライザーに接続(N→M変換コネクタ使用)して測定した。すると145.00MHzではSWRが4.0と極めて高い数値に…。これも同社の設計・測定条件に合わせて正しく測定したところ、145.00MHzで1.2以下という良好なSWRになった。

 

144/430MHz帯のモービルホイップ、CR-77をアンテナアナライザーに接続。「モービルホイップをこうやって測定するユーザーも多いですが、正しくありません」という

上記の状態で測定したところ、145.00MHz付近のSWRは悪化。アースや使用環境を考慮した正しい測定を行えば1.5以下になるという

CR-77を同社標準の方法で測定した場合のアンテナ特性。144MHz帯、430MHz帯ともSWRは1.2程度と良好だ

 

 同社はほとんどの場合、モービルホイップアンテナの調整に自動車の車体を利用している。さらにノンラジアルタイプのアンテナの場合は、その“ノンラジアル性”を確認するために、木板の上に載せたマグネット基台を用いて、わざとアースが取れていない環境を作り出し、その環境下でもアース有りの場合の特性と相違ないか確認したり、給電部(アンテナの根本部分)にラジアルの代わりとなる金属棒をバイオリンの弓のように動かして、共振点が大幅にズレないかといった確認も行っている。「“ノンラジアル性”が担保されていないと、ラジアル棒を動かすと共振点は大幅に乱れるので、設計がまだできていない判断材料になります」ということだった。

 

川越事業所の屋上にはアンテナ測定用車両が設置されている。そのルーフサイドにCR-77を取り付け。144/430MHz帯のモービルホイップの開発時などはこの方法で測定を行っている

 

 ちなみに144/430MHz帯のアンテナは、波長が短く、大地間浮遊容量の影響が小さいため、川越事業所の屋上に置いた測定用車両だけの測定で済んでしまう。しかしHF帯のアンテナは波長が長く、アースの状態が非常に深く関係し特性を左右するため、屋上の車両では(地表面から大幅に浮いているため)正しい測定値が得られない。

 

「要はコンデンサと同じで、車両と大地間の浮遊容量が発生しインピーダンスが低くなってしまうのです。こうした場合、弊社では実際に使用している車両(従業員の自家用車)に取り付けて調整をしています。ただアンテナ基台の設置場所によっても測定値が微妙に変化するため、独自の基準を設けて測定したものを標準としています」。

 

 担当者はユーザーからのよくある相談事例として「“ルーフキャリアにHFモービルアンテナを設置し、MAT50や平編み線などでアースを取ったのに調整が取れない”という現象を挙げた。「これは、車の屋根がある意味でグランド(擬似的な地表面)になってしまい、そこからルーフキャリアで浮いた高さ分の浮遊容量が発生してインピーダンスが低くなり、調整が取れないのが原因と考えられます」という。

 

 その場合の改善策だが「回路の途中に直列コンデンサを挿入してインピーダンス補正するか、アンテナ取り付け角度を調整してインピーダンス補正にトライすれば改善しますが、基本的な動作原理を理解した上で経験を積まないと、なかなか難しいかもしれません…」と語っている。そして「HF帯モービルアンテナで“調整が取れない”という事例の大半はアースの容量不足によるものなので、取り付け方法やアースの取り方を再検討してください。とはいえ、HF帯のアンテナを市販のアンテナアナライザーに直付けで測定するのは、さすがに論外ですが…」と付け加えた。

 

第一電波工業はノンラジアルタイプのホイップアンテナの袋には「VSWR:1.5以下」という表記を入れているが、1/4波長型などアースが必要なホイップアンテナはその表記を入れていない

 

 およそ2時間にわたる説明会で、同社のアンテナ設計・製造時の測定が厳格な基準のもとで行われていることを知った。最近はアンテナアナライザーが比較的手軽に入手できるようになったが、測定方法や使用環境によって得られる数値は大きく変わることに留意する必要があるだろう。

(取材協力:第一電波工業株式会社)

 

 

●関連リンク:
・第一電波工業
・アンテナ 無線に関する豆知識1(第一電波工業)
・接地型アンテナのためのアース(第一電波工業)
・アースって何?(第一電波工業)
・アンテナ利得大研究(JAIA技術委員会)
・Masacoの「むせんのせかい」第一電波工業の皆さん(月刊FBニュース)

 

 

 

【予告】hamlife.jpでは、第一電波工業のブランドを盗用した「偽物」のハンディ用アンテナを独自に入手した。今回の説明会終了後、同社に依頼して鑑定と測定を行っていただいた。その結果を近く紹介する予定だ。

 

ニセ物アンテナの検証記事はコチラ↓
<SWRを実測してビックリ、分解してさらにビックリ!!>第一電波工業のハンディ用アンテナ「SRH805S」の模造品(ニセ物)に注意

 

 

 

 

 

 

 

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