最近のコンディション上昇にともない、HF帯のハイバンドが賑やかだ。とくにHFアマチュアバンドで唯一、音質の良いFMモードが許可されている28MHz帯(10mバンド)は、29MHz以上の周波数でFMモードの運用が割り当てられていることから、“29メガFM”や“29FM”と呼ばれ、古くから愛好者が多い。普段は静かな“29FM”だが、ひとたびEスポ(スプラディックE層)が発生すると、国内局はもとより海外局とも交信が楽しめる。一方で混信などの混乱も生じているという。パシフィックレピーターネットワーク(PRN)では、「いわゆるパイオニアの皆さんが作りあげてきた“運用プラン”をご存じないようです。なかには衛星バンドで交信されている方もいます」として、DXコミュニケーションバンド「29MHzFM/10mFM 運用ガイド(2004年最終校正)」をWebサイトで公開。古いものだが、29MHz帯FMモードの運用周波数プランの周知を行っているので、一読をおすすめしたい。
29MHzFM/10mFM 運用ガイド(2004年最終校正)
●29MHzFM・バンドの特徴
V・UHF帯の感覚でHF帯の飛びとFM特有のFBな音質が楽しめるバンドです。そして、HF帯ですのでもちろん海外との交信のチャンスがあり。 また、電離層反射または山岳回析、あるいはレピーターによって思わぬ地域と交信ができる素晴らしいバンドです。
とくに4月から9月にかけての時期は「Eスポ(電離層=スポラディックE層)」の出現で大変賑やかにQSOが行われます。
●バンドプラン
10mFMは29MHz FMと言われているように29MHz以上の周波数が使用されており、10mバンド(28MHz帯)でのFMモードの運用区分は下記のバンドプランの通りに決められています。そして、これらは諸外国のFMモードプランに合せて行っています。
従って、バンドプランを無視しての運用は国際ルールに反することとなりますのでプランを厳守してください 。
●運用方法
バンドプランのようにFMモードの運用は、29.00~29.70MHzの間の衛星通信周波数を除いた29MHz帯で行われ、慣習により国際呼出し周波数=29.60MHz(米国・欧州局などが受信)アジア周辺呼出し周波数=29.30MHz(以前から日本国内呼出用でした)を多数の局が受信しています。
通常の交信(シンプレックス)は29.30MHzで呼び出したあと20kHz間隔(偶数周波数)で29.00MHzまでの間にQSYしてQSOします。海外では、日本より局数が少ないため29.60MHzで呼び出し、レピーター用出力周波数側でQSOが行われています。アメリカでの運用は、国土の広さと局数の違いからレピーター中心のQSOが多く、ヨーロッパではCB機改造で29.60MHzより上に10kHzステップでのQSOが多いようです。
10mFMを運用するにあたってバンドプランを守ることは当然として、V・UHFとは違った点があります。それは国際バンドであり海外まで電波が飛んで行くことです。日本を代表するスマートなQSOを心掛けなければなりません。最低限QSOできるだけの英語力は必要です。自己紹介ぐらいはできるようにしておきましょう。
CQを出すときは、SSBと比べてコールサインの確認がしやすいため、短いコールをするとともに前もってQSY周波数を確認しておくとスムースです。使用できるFMの周波数には限りがあります。周波数がすべて使用中の時はローカルラグチューは控え、周波数が空くまでワッチし、紳士的に運用しましょう。
●レピーター運用
10mFMレピーターはUHF帯のレピーターと違い広いエリアをカバーし、そして電離層反射を利用するものです。日本を含め10mFMレピーターの多くは、88.5Hzのトーンの入ったマイナス100kHzシフトができるトランシーバーで使用できます。
アクセス方法はUHF帯レピーターと同じですが日本だけでなく海外局も聞いている場合もありますので、「CQレピーター」などのような変な呼び方はやめ国際的広域レピーターにふさわしいQSOをしましょう。
レピーターは人工の電離層のようなものです。皆さんが末永く利用できるよう支援と協力をしアマチュア無線の財産として大切にしましょう。
●リグ・アンテナ
このバンドは飛ぶ距離と開局コストを考えると一番安く遠方とQSOができます。JARL認定のリグはもちろん、CB機の改造などでハムライフを楽しませてくれます。自分の予算に合ったリグを選び必ずFMモードへの変更手続きをした上でQRVしましょう。
アンテナは、固定はGP、モービルはホイップが多く主に垂直偏波です。しかし、DXや回析通信などには水平偏波も大変良好で、FMの場合位相ズレで音声が聞き取りにくくなることがあるため水平垂直両方あればFBです。モービルアンテナは、自作などの研究ができる面白さがあります。
●スーパーナローFM運用
α.スーパーナローFMの必要性
10MバンドはHF帯で唯一FMモードで運用できるバンドです。しかしながら、FMであるが故の問題もあります。それは占有周波数帯幅が他のモードに比べて広いことです。つまり同じ周波数帯であれば、ほかのモードに比較して同時に交信できる局数が少なくなり、4月から9月にかけてのEスポ・シーズンには混信が多くなります。かといって10mFMユーザーが勝手にバンドプランを変更しFMモードでの運用区分を広げるのは困難です。
そこで考えられたのが周波数帯幅の狭帯域化(スーパーナローFM化、単にナローFMと言う場合もある)で、29.00~29.30MHzの10mFMバンドでは、従来より原則として20kHzステップで運用されておりますが、この原則を崩すことなく一部周波数帯(29.20MHz以下を推奨)で20kHzごとのチャネルの上下10kHzに新たなチャネルを割り込ませようとするものです。
この狭帯域化は、すでに1986年ごろに、当時の10mFMバンドで先進的活動をされていたOM数局によって提案がなされ、かつ各局にその運用を働きかけ、そのあと多くの無線機改造方法(受信フィルターの交換およびディビエーション調整)の紹介とともに10mFM各局に広まって行きました。
さらに、現在では無線機メーカーの多くの製品がこのナローFM運用に対応できるようになりました。
β.ナローFM運用方法
しかし、この新しい運用方法が浸透すればする程これが当たり前になり「なぜナローFMなのか」と言う疑問さえ薄れて行きます。
また、最近になって新たにこのバンドでの運用を開始した局は当然このような働き掛けがあったことなど知る由もありません。従って、ナローFM運用が必要になった背景を振り替えりつつ、より有効に運用できるように周波数運用プランを再度認識しようではありませんか。
運用については、ナローFMでの運用はバンドプランの表のように、29.20MHzまでとし、29.20MHzから29.30MHzまでは従来のノーマルFMでの運用ができるようにしてはいかがでしょうか。
10mFM各局のご理解とご協力をお願いいたします。
参考:CQ Ham Radio 10mFMコラム(JH7LGJ著)/10mFM運用冊子(JG1DKJ著)/PRNニュース/PRN10周年記念誌
編集:JQ1ABR/JL1HTC
改訂:2004年08月20日
製作著作:パシフィックレピーターネットワーク (転載時の改編はご遠慮ください)
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●関連リンク:
・29MHzFM/10mFM 運用ガイド(パシフィックレピーターネットワーク/PDF形式)
・PRN/パシフィックレピーターネットワーク
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