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<提出された意見と考え方を公表>総務省、アマチュアバンド(2.4GHz帯や5.7GHz帯)への影響は!?「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」パブコメ結果

総務省情報通信審議会情報通信技術分科会陸上無線通信委員会は「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」のうち「構内における空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」に関する「陸上無線通信委員会報告(案)」を作成。2020年2月22日から3月23日(月)までの間、報告案に対して広く一般からの意見を募集していたが、このほど提出された意見と意見に対する同委員会の考え方を公表した。

 

 

公表された「陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集の結果及び提出意見に対す陸上無線通信委員会の考え方」。63件(法人6件、団体3件、個人54件)に及ぶ意見の提出があった

 

 

 

「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」とは、いわゆる「ワイヤレス給電」のことで、有線を使わず電波の送受信により電力を伝送するシステムのことだ。すでにコイルを利用してスマートフォンなどを充電する方法が実用化されているが、これは「近接結合型」と呼ばれるもので、送電部と受電部とを直接接触、または数cm離して電力を供給を行う。

 

 一方、今回の「空間伝送型」とは、10m以上離れて給電することを想定し、使用する周波数帯は、アマチュアバンドを含む920MHz帯/2.4GHz帯/5.7GHz帯の3つで実用化に係る制度整備が進んでいる。

 

 使用する周波数のなかで2.4GHz帯/5.7GHz帯(アマチュア業務は二次業務)は、アマチュア無線に影響を及ぼすとの懸念があることから、今回の意見提出者には、一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)をはじめ、任意団体の冗楽工業アマチュア無線同好会など、個人を含め賛成・反対63件(法人6件、団体3件、個人54件)に及ぶ意見の提出があった。

 

 

 以下、公表された意見とその意見に対する陸上無線通信委員会の考え方(一部抜粋)。

 

 


 

●一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)からの意見

 

 今回のワイヤレス電力伝送システムはシステム設計上、送電電力に対する受電電力の比率が1割にも満たない非常に非効率なシステムである。

 

 特に5.7GHz帯における導入に関しては、2.4GHz帯では設置条件を設定し、他のシステムに対する配慮がなされているのに対し、5.7GHz帯は、設置条件が設定されておらず野放し状態の中、EIRPで10kWにも及ぶ大電力を放射するとしている。用途・使途に関しても他の周波数帯と同じアプリケーションが示されているだけである。

 

 作業班での論議でアマチュア無線側から示した許容干渉電力に対する離隔距離も確保されぬまま、アマチュア無線に妨害が発生する事を前提としたものになっている。よって、今回のワイヤレス電力伝送システムの導入には賛同することはできない。

 

 

●意見に対する陸上無線通信委員会の考え方

 

 空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムは、遠く離れた場所にあるデバイスへの電力伝送を目的としており、配線や電池交換等の問題を解決しようとするものです。

 

 アマチュア無線との共用検討に関しては、同一周波数かつビーム同士が正対する場合の最悪条件で検討を行い、報告書第3章第3節第3項(8)に記載のとおり、5.7GHz帯の共用検討では、パラボラアンテナと空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの主方向が向き合った場合には約17.5kmの所要離隔距離が必要との結果を示し、共用が難しい場合がある旨を報告にも記載しています。

 

 この結果等を踏まえ、第3章の周波数共用条件の中の「3.5 留意事項」において、アマチュア無線も含め既存の無線システムとの共用については運用調整の仕組みの構築について必要性を述べています。この仕組みにより、上記のような最悪ケースの場合にも、ビーム方向(送電装置と受電装置の位置関係)や、遮蔽板などの干渉回避等による運用調整が可能になると考えます。

 

 


 

 

●(任意団体)冗楽工業アマチュア無線同好会からの意見

 

<2.4GHz帯について>

 

 アマチュア無線に対する割り当て周波数(2400MHz~2450MHz)に、無線LAN、構内無線局(移動体識別)、ISMが被っています。本案では更にWPTが追加されることとされています。

 

<5.7GHz帯について>

 

 アマチュア無線に対する割り当て周波数(5650MHz~5850MHz)に、無線LAN、DSRC, 無人移動体高速伝送システム、ISMが被っています。本案では更にWPTが追加されることとされています。

 

 IoT時代の到来により、無線LAN、移動体識別、ISM、DSRC、無人移動体高速伝送システムの利用は今後ますます増えていくことでしょう。同時に新しいシステムの実験・研究についても継続的に行っていく必要があります。

 

 しかしながら、いずれの周波数帯においてもアマチュア無線は二次業務とされているため、一次業務の通信に対してうっかりと有害な混信を生じさせてしまった場合に罪に問われたり損害賠償を請求される可能性があります。このような状況下でマトモな実験・研究が行えるとは到底思えません。よって、アマチュア無線に対する割り当て周波数を、重複が少ない周波数に変更して頂けないでしょうか?たとえば2540~2680MHz、5930~6100MHzなど。

 

 

●意見に対する陸上無線通信委員会の考え方

 

 報告書第2章に記載のとおり、利用周波数については空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムにおける電波利用に対する利用ニーズを検討した結果、低コストの無線設備実現、国際標準化の観点も踏まえた上で検討対象を絞ったものです。

 

 加えて、報告書第5章に記載のとおり、アマチュア無線も含め既存の無線システムとの共用については運用調整の仕組みの構築について検討が必要としております。

 

 


 

 

●個人からの意見

 

「詳細意見内容」

 

5.7GHz帯システム技術的条件について

 

・使用チャネル数(9チャンネル)を1波へ削減を求めます。空間電力伝送において9チャンネルの必要性が不明である。同一チャネルにて運用可能と考える。

 

・不要発射の許容値が緩い
 中心周波数から上下100kHzから2MHzの不要発射の許容値が+8dBmとなっている。他の通信と同様に-13dBm(50μW)以下にするべき。昨今、不要発射を厳しく制限している中で逆行している。無変調搬送波であれば、占有周波数帯域は非常に狭いはずであるが、中心周波数の近傍の許容値が異常に緩和されており、実運用時には帯域を制限されていない電波の送信となる恐れがある。結果的に他の通信への干渉を許すことになる。

 

・チャンネル周波数(5758MHz、5764MHz)について 削除するべき。
 アマチュア無線周波数5760MHzを中心に上下1MHz以内の周波数を海外も含め通信に利用している。また、この周波数近辺では世界的にEME通信にも利用しておりWPTを海外展開した場合摩擦は避けられない。

 

注:特に、5745MHz帯では、デジタルアマチュアTV(OBW 6MHz)の運用をしております。大型のパラボラアンテナを使っているため、WPTからの影響は計り知れない。

 

「希望」
・WPTの展開が始まって通常の通信が出来ないほどの大きな影響が発生した場合、仲裁できる機関を設けてほしい。

 

 理由は、2.4GHz帯の様相はバンド内に強力な無線信号だらけとなっており、微弱電波を扱うアマチュア無線局にとって非常に使いづらいバンドとなってしまっている。

 

 

●意見に対する陸上無線通信委員会の考え方

 

 報告書第2章第2項(6)(エ)記載のとおり、屋内での利用のユースケースにおいて、隣接する送信装置エリアとは異なる周波数チャネルを利用する必要があり、また、屋内設置環境、建物構造及び屋内伝搬状況により干渉の状態が変わることから、一部チャネルを使用できない場合を考慮すると最大9チャネルを必要とする場合があるため、使用チャネル数を9チャネルとしています。運用はその内の7チャネルで可能です。説明が不足していましたので参考資料14として追加し、本文中の記載も追加しました。

 

 不要発射の強度の許容値については説明が不足していましたので、参考資料13として追加しました。5.7GHz帯の空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの必要周波数帯幅は100kHz、帯域外領域とスプリアス領域との境界周波数は250kHz(中心周波数からの離調周波数)となります。他の無線システムとの共用検討については第3章に記載のとおりです。

 

 報告書参考資料6(8)の評価結果に記載のとおり、月面反射通信(EME)に対しては中心周波数が2MHz以上離れているため、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの送信と指向方向が一致した場合に、パラボラアンテナで約1.5km、八木アンテナで約260mの離隔距離が必要となり、アンテナが向き合った場合での共用は難しいと考えられます。しかし、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの利用を想定している工場、倉庫などからの影響としては限定的であると考えられます。

 

 加えて、報告書第6章に記載のとおり、アマチュア無線も含め既存の無線システムとの共用については運用調整の仕組みの構築について検討が必要としております。

 

 


 

 

●個人からの意見

 

5.7GHz帯システム技術的条件について

 

・使用チャネル数(9チャンネル)を1波へ削減を求めます。
 空間電力伝送においてチャンネルの必要性が不明である。同一チャネルにて運用可能と考える。

 

・不要発射の許容値が緩い
 昨今、不要発射を厳しく制限している中で逆行している。無変調搬送波であれば、占有周波数帯域は非常に狭いはずであるが、中心周波数の近傍の許容値が緩く、帯域を制限されない電波の送信となる。結果的に他の通信への干渉を許すことになる。

 

・チャンネル周波数(5758MHz、5764MHz)について
 アマチュア無線周波数5760MHzを中心に上下1MHz以内の周波数で海外も含め通信に利用している。この周波数近辺では世界的にEME通信にも利用しておりWPTを今後海外展開した場合摩擦は避けられない。

 

 

●意見に対する陸上無線通信委員会の考え方

 

 報告書第2章第2項(6)(エ)に記載のとおり、屋内での利用のユースケースにおいて、隣接する送信装置エリアとは異なる周波数チャネルを利用する必要があり、また、屋内設置環境、建物構造及び屋内伝搬状況により干渉の状態が変わることから、一部チャネルを使用できない場合を考慮すると最大9チャネルを必要とする場合があるため、使用チャネル数を9チャネルとしています。運用はその内の7チャネルで可能です。説明が不足していましたので参考資料14として追加し、本文中の記載も追加しました。

 

 不要発射の強度の許容値については説明が不足していましたので、参考資料13として追加しました。5.7GHz帯の空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの必要周波数帯幅は100kHz、帯域外領域とスプリアス領域との境界周波数は250kHz(中心周波数からの離調周波数)となります。他の無線システムとの共用検討については第3章に記載のとおりです。

 

 報告書参考資料6(8)の評価結果に記載のとおり、月面反射通信(EME)に対しては中心周波数が2MHz以上離れているため、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの送信と指向方向が一致した場合に、パラボラアンテナで約1.5km、八木アンテナで約260mの離隔距離が必要となり、アンテナが向き合った場合での共用は難しいと考えられます。しかし、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの利用を想定している工場、倉庫などからの影響としては限定的であると考えられます。

 

 


 

 

 詳しくは、記事下の関連リンクから確認してほしい。

 

 

 

●関連リンク:
・総務省 陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集の結果
・総務省「陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集の結果及び提出意見に対す陸上無線通信委員会の考え方」(PDF形式)
・世界に先駆け検討が進むワイヤレス給電の制度化検討、3パターンの周波数による運用が実現する可能性(新電力ネット)

 

 

 

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