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<特別寄稿>米国ハムの「社会貢献活動」事情と「バンド内の不法局」

総務省は2021年3月に電波法令を一部改正し、アマチュア無線を社会貢献活動に利用できるようにすることを決定した(2月3日の記事参照)。この改正案の説明資料の中に「米国ではアマチュア無線による災害支援・ボランティア運用・マラソン大会等の地域イベントへの参加は日常的に行われており…」という記載がある。はたして米国ハムの無線ボランティア活動の実状はどうなのか、また144/220/430MHz帯アマチュア無線バンド内に業務使用の不法局などは出没していないのだろうか。hamlife.jpは米国ニューヨーク州在住のハム、前田正明さん(W2/JR1AQN)から「米国ハムの社会貢献活動」と題したリポートを寄稿いただいた。米国には日本とはかなり違う状況と背景があるようだ。

 

 

総務省のパブコメ資料にも登場した、ARRLの公式サイト内「Use Your License to Serve the community」コーナー

 

 

米国ハムの社会貢献活動

 

★はじめに
 日本でも3月から、社会貢献活動におけるアマチュア無線の使用が認められるようになると聞きました。米国ではアマ無線による災害支援、ボランティア運用、マラソン大会等の地域イベントへの参加は日常的に行われており、ARRLにおいても「Use Your License to Serve the community」と積極的に推奨しています。日本のハムの間では賛否両論ある社会貢献活動への参加ですが、米国のハムの皆さんがどのような感じで社会貢献活動に関わっていらっしゃるのかを簡単に述べてみたいと思います。

 

 私はマンハッタンから32マイル(約50km)の郊外に住んでいます。グランドセントラル駅から急行で45分ほどのハドソン川沿いの住宅地ですが、たくさんの自然が残されているエリアでもあります。2年前ほど前から、我が家近隣の無線クラブ(Peakskill/Cortlandt Amateur Radio Association、以下 PCARA)に所属して、ハムとしての活動を広げることができています。このクラブの社会貢献活動状況をレポートします。

 

 

★ランニングイベントへの貢献
 PCARAでは、著名なミュージシャンのメモリアルとして地元で開催されるチャリティー競技会(ランニングイベント)「Harry Chapin Memorial Run Against Hunger」の大会運営のための無線通信バックアップのボランティアを、6年近く継続して行っています。

 

毎年開催されている地元のランニングイベント「Harry Chapin Memorial Run Against Hunger」の公式ページ

 

 この競技会の運営には、地元の高校、救急医療サービス、警察、ガールスカウト、ボーイスカウト、およびニューヨーク州の環境保護局という組織が動員されています。このうち無線通信は当クラブのPCARAとウエストチェスター緊急通信協会(WECA)という2つのジョイントで担当しています。

 

 本部のコマンドセンターに本部が設置されてコントロールセンターになっています。イベントが開催された地域は比較的地形が複雑なエリアで、携帯電話のエリアがまだら模様になっているところなので、エリアが十分でないところを補完することと、信頼性向上のための2経路の確保を目的として導入されていると思われます。クラブのレピーターを使用した144/430MHzでの運用です。本部の様子や給水所やチェックポイント的な場所の設営状況は写真を参照してください。地域の新聞にはその貢献が謝意と共に掲載されています。

 

 

地元紙には無線クラブのランニングイベントへの貢献が謝意と共に掲載された

 

★教会のクリスマスイベントなどの交通整理と駐車場管理
 クリスマスの日、摂氏0度、あるいはそれ以下にもなる厳しい寒さの中の教会イベントへの貢献をしています。クリスマスの午後、14時30分から屋外で駐車位置の路面状況のチェックが始まります。15時ごろから車が集まり出し、16時から教会内でのクリスマスイベントが始まります。終了後、写真にあるようにパイロンなどを片付けて終了ということです。

 

 車の整理や案内にハンディトランシーバーは使用しますが、実質的に教会イベントの駐車場整理係です。寒くて大変な仕事を進んで引き受けるということが、地域への貢献であり、ハムクラブ活動への理解を生むように感じます。この教会イベントの駐車場管理は四半期に一度くらいやっています。

 

 

★各種の団体が一つのチームになってイベント運営
 世界最大級のアマチュア無線イベント、オハイオ州デイトンの「Hamvention」も迷彩服を着た州兵とアマチュア無線クラブが一体となって駐車場の運営管理をしていました。

 

 この例からもわかるように、各地域の大きなイベントは各種団体が集まって、お互いの得意な分野を生かしながら一体となって運営をしているという印象を受けます。プロフェッショナルとアマチュア(あるいはボランティア)という線引きはあまりなく、コミュニティーとしての結束で一体となって行動するという印象を受けることが多いように思います。

 

デイトン・ハムベンションの広大な駐車場

 

 

★ボランティア活動での無線運用を一般のハムはどう受け止めているか?
 こうしたボランティア活動の連絡で運用中、活動に参加していない一般のハムからクレームや妨害が入ることは、私が知る範囲ではありません。上記で説明したように“自分たちのコミュニティーでのイベント”という色彩が極めて強いので、そこでの奉仕や貢献に敬意はあっても、クレームや嫌がらせという感覚はないのではないでしょうか? 大都市部は分かりませんが、郊外は小さな町が多いですから、運用しているハムならば、そこのクラブのメンバーであることが多いのです。

 

 

★V/UHF帯のアマチュアバンド内に不法局は出没しているか?
 144/220/430MHz帯など、アマチュアバンド内に出没する“業務使用の不法局”もあまり聞いたことはありません。あくまで個人的な体験ですが、自宅などでワッチする限り、アマチュアバンド内を使った不法な無線局は聞いたことはないと思います。米国では、144/220/430MHz帯は居住エリアに比べて絶対的な到達距離が短く、レピータを利用しないと使い物にならないように思います。そんなところも原因ではないでしょうか?

 

 また、QSTなどで長期にわたって他局に混信を与えていたことでFCCに摘発された例などを見ると、非常に高額な罰金が科せられています。米国は一見何でも自由なように見えますが、ルール違反には厳しい社会だと思います。あまり詳しくはありませんが、CB無線もトラックドライバーの間では現役で、Amazonで見ると車載用のCB無線機が150ドルくらいで買えますから、法を犯してまでハムの無線機を使う必要もないように思います。

 

前田正明(JR1AQN)/米国Briarcliff Manor, NY在住

 

 

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