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その2:KDDI八俣送信所の「送信機」
KDDI八俣送信所には現在、予備機を含めて300kW送信機が5基(P-1、P-2、P-5、P-6、P-7)と100kW送信機が2基(Q-1、Q-2)ある。
送信機室。右が300kW送信機、左は100kW送信機が並んでいる
今回メインで見学したのは300kW送信機のうちの1基、P-5だ。国際電気の「SP-1」という機種で5.9~21.9MHzのAM(DSB)/SSB送信が可能。平成24(2012)年に変調方式をPSM(パルスステップモジュレーション)に改修。電力増幅部はフランスにある世界最大の電子管メーカー、THALES(タレス)社のTH558E(4CM500000G)という水冷管を使っている。今回はそのTH558Eの取替作業も見ることができた。
点検中の300kW送信機(P-5)を見学。説明は八俣送信所マネージャーの堀江 孝さん
太い2本のパイプはπ(パイ)型マッチング回路。送信周波数を変更するとショートバーが動いて同調を取る。左側に3つ並んでいるのは水冷式の真空コンデンサ
水冷式なので、送信機下部にはさまざまな配管が伸びている
300kW送信機の操作パネル。とてもわかりやすい
300kW送信機の操作パネル。昔の名残りなのか現在はアマチュアバンド内の「7155kHz」もプリセットされていた。一時期“短波放送のSSB化”という計画があり、この送信機はAM(DSB)以外にSSB送信にも対応
300kW送信機の周波数設定パネル
300kW送信機の終段管、TH558Eの交換風景。重量は約70kgあるので電動の吊り下げ装置で下ろすという
取り外したTH558Eを専用台車に載せたところ。送信管は一定時間使用したら異常がなくても交換している
TH558Eを取り外した送信機の内部。写真左に見えている2本の朱色のホースは、TH558E上部に取り付ける冷却水の循環パイプ
「SP-1形 短波DSB/SSB送信機」の取扱説明書と試験成績書のファイル
交換用の真空管類などはストックされている
このあと別室(電源室)に案内されたのだが、ここには金網に囲まれた超大型の変調トランス(通常はプレートスクリーン同時変調の予備送信機で使用)とチョークが設置されていた。近づくと変調トランスからスピーカーのように放送音声が出ているのには驚いた。
超大型の変調トランス。唸るというよりも「変調した送信音声が聞こえている」のには驚いた
●スピーカーのように音楽(放送音声)を奏でる変調トランス(通称「喋るトランス)
↓画面をクリックするとスタートします。
変調トランスも国際電気製。総重量は4,000kg!
点検中の300kW送信機(P-7)。スイスのAMPEGON社製で2015年に導入
送信機室の最後にアンテナ切替器と100kW送信機用のダミーロードを見学したが、どちらも想像を絶する大きさに驚かされた。
P系アンテナ切替制御装置と、各送信機のアンテナ切替器。上部に見える2本の黒いパイプ状のものが同軸ケーブル(HF-203D、外径226mm。耐電力は30MHzで700kW)
P-1送信機、P-2送信機のアンテナ切替器。同軸ケーブルが太く、ハイパワーを扱うことから切替器も巨大になる
100kW送信機用のダミーロード
「アンテナ」の写真は次ページ参照!