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<送信開始80周年、海外向け短波放送の発信源>写真で見る「KDDI八俣送信所」の送信機、アンテナ

 

前ページからの続き

 

 

その3:KDDI八俣送信所の「アンテナ」

 

 約100万平方メートルの敷地には、世界のさまざまな方向に放送を届けるため、カーテンアンテナ15基とログペリアンテナ3基を設置している。

 

局舎屋上から見たアンテナとケーブルのある風景

敷地内のアンテナ配置と方角の関係図。北東-南西方向と東-西方向の配置が多い。2009年にカーテンアンテナと水平ログペリアンテナを各1基撤去し、その跡地に太陽光発電所を設置した

 

★カーテンアンテナ(遠距離向け)15基
 ローバンド用:5.9~12.1MHz 高さ70m×幅100m
 ハイバンド用:13.6~21.9MHz 高さ35m×幅100m
 利得:16.5dBi以上
 発射角:約10度
 耐入力:300kW×12基、100kW×3基
 特徴:鋭い指向性
 製作:TCI社(米国)

 

ローバンド用カーテンアンテナ。高さ約70mの鉄塔に設置

ハイバンド用カーテンアンテナは高さ35mに設置。ちなみに送信中のアンテナ付近で蛍光灯を手に持つと「光る」そうだ。この原理を応用し、アンテナの近くには送信中であることがわかる「無電源の警告灯」を設置しているという

 

★水平ログペリアンテナ(中近距離向け)3基
 5.9~21.9MHz 最大高44m×幅40m×全長69m
 利得:14.5dBi以上
 発射角:約21度
 耐入力:100kW
 特徴:水平面の放射角度が広く広範囲に電波を発射
 製作:TCI社(米国)

 

逆光で見づらいが、水平ログペリアンテナは高さ44mの鉄塔2本の間に設置

 

 このうちカーテンアンテナの一部は反射スクリーンを備え、指向性を180度(または30度)変えられる機能を装備したものもあるという。

 

KDDI八俣送信所で使用しているカーテンアンテナと水平ログペリアンテナの説明図

送信機から伸びてきた5本の太い同軸ケーブル(外径226mm)はここで分岐。それぞれのアンテナに給電される

送信機からの同軸ケーブル(写真左側、50Ω不平衡)は、この部分(一種のバラン)で300Ωの平衡インピーダンスに変換。4線式の平衡フィーダーになって各アンテナに給電される

4線式の平衡フィーダーに変換される部分。真空コンデンサがついている

 

 アンテナはメインテナンスが重要だ。KDDI八俣送信所では、専門スタッフが高所作業車(車両が届かない場所は、宙乗りのゴンドラを使った人力)でアンテナの状態を点検。常に良好な状態で送信できるように補修を行っている。

 

高所作業車によるメインテナンス作業

メインテナンス作業は2人1組で行う

 

 ちなみに“送信所の大敵”といえば、すぐ「雷」と「台風」が思い浮かぶが(もちろん避雷対策を行い、風速60m以上に耐える設計が施されている)、それ以外に「虫」や「鳥」も怖い存在だという。送信中のアンテナに虫や鳥がぶつかるとアンテナに異常放電が生じたり、SWR悪化で送信機の故障につながることもあるからだ。

 

 そのためKDDI八俣送信所では、敷地内を芝生化した上で、バッタなどの昆虫が発生しにくいように短く刈り込んでいる。虫が発生しなければ鳥も寄りつかないが、敷地が広大なだけに手入れは大変な作業になる。またアンテナに給電する4線式平衡フィーダー(300Ω)は上部に絶縁ロープを張って、フィーダーに鳥が止まらないようにしているという。

 

敷地が広くアンテナも多い。常に良好な状態に管理するのは手間が掛かる作業だ(敷地外から撮影。手前は民間農地)

手入れがされた敷地内。境界には「許可なく、きのこ、木の実等を採ることを禁止します」という立て看板も立っている

 

 300kWものハイパワーで送信することから、周囲の民家などにインターフェアが発生する可能性はないかを尋ねたところ「元々、民家の少ない場所を選んで送信所を開設したが、それでもインターフェアがないわけではない。個別に障害対策を行っているほか、2011年の地デジ化まではKDDIの負担で周辺地域にテレビの共同受信システム(CATV)を導入していた」という説明だった。

 

局舎の上に2基のディスコーンアンテナとV/UHF帯の受信用ログペリアンテナが取り付けられていた。このコンパクトなアンテナを見て、少しホッとした気分になった

 

 

 約2時間の見学ツアーだったが、300kW送信機の内部や“声が聞こえる変調トランス”、直径226mmの同軸ケーブル、巨大なアンテナ群など、ここでしか見られないものばかりで貴重な写真を撮影することができた。

 

 インターネット全盛の時代だが、世界にはまだ短波放送でしか情報が伝えられない地域や、国家がインターネット接続を管理しているところがある。世界に日本の正しい姿を伝えるために国際放送は今でも重要な手段だ。短波で「NHKワールド・ラジオ日本(Radio Japan)」の信号を受信した際は、KDDI八俣送信所と、そこで24時間働く職員にも思いを馳せていただきたい。

 

 

 

 

こちらの記事↓↓も参考に!

 

<写真で見る>短波放送局ならではのアンテナ群、ラジオNIKKEI「長柄送信所」と「根室送信所」の全貌(2014年1月掲載)

 

<写真で見る>さようなら!! “昭和の香り”の短波放送局--「ラジオNIKKEI」社屋移転前の内部を激写!!(2013年12月掲載)

 

【写真で見る“JJY”】<250m高の傘型アンテナで長波40kHzを送信!!>JARL福島県支部、「NICT おおたかどや山標準電波送信所」見学会を開催(2016年6月掲載)

 

 

 

●関連リンク:
・国際放送短波送信所 送信開始80年で式典(NHK NEWS WEB 5月19日付け)
・上記↑↑ NHKニュースの動画 (期間限定公開、画面クリックでスタート)
・広大なカーテンアンテナから世界に安心を 日本唯一の『短波』国際放送送信所(KDDI TIME&SPACE:2017年11月掲載)
・海外で聴くには(NHK WORLD-JAPAN)
・NHK WORLD-JAPAN 送信スケジュール A-21 PDF(NHK)

 

 

 

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