アマチュア局が一次業務(一次分配)である日本の430MHz帯アマチュアバンド内(433.92MHz)に、空中線電力 EIRP 1mW以下の「タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)」と「リモートキーレスエントリシステム(RKE)」の二次分配を行うことが計画されている。このほど総務省は「433MHz帯タイヤ空気圧モニタ及びリモートキーレスエントリに係る技術的条件について」として、同省の情報通信審議会情報通信技術分科会陸上無線通信委員会が取りまとめた、小電力無線システムの高度化に必要な技術的条件に関する報告(案)について、10月7日まで意見募集を開始した。同委員会の専門委員を務める森田JARL会長(JA5SUD)は「TPMS・RKEからアマチュア無線への干渉はまったくないとは言えない状況ではあるが、世界的な普及等を考慮し、JARLとして周波数共用は容認せざるを得ないものと考える」と委員会で述べている。
自動車の「タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)」と「リモートキーレスエントリシステム(RKE)」は、日本では特定小電力無線局として315MHz帯が使用されているが、米国やEU、韓国など日本を除く世界各局では433MHz帯が主に使用され事実上の世界標準周波数となっているため、海外メーカーを中心に、日本国内でも諸外国で流通している433MHz帯のTPMS/RKEをそのまま使用したいという強いニーズが存在しているという。
そのため総務省では情報通信審議会 情報通信技術分科会陸上無線通信委員会に諮問を行い、同委員会が2023年5月から433MHz帯のTPMSとRKEの技術的検討(アマチュア無線との干渉などを確認する実機試験を含む)を行い、その結果をふまえた114ページにおよぶ報告(案)をこのほど取りまとめた。
陸上無線通信委員会には、森田JARL会長も専門委員として加わっている。また同委員会の「小電力システム作業班 433MHz帯TPMS・RKEシステムアドホックグループ」では主要自動車メーカーや自動車関連のエレクトロニクスメーカーのほか、JARL、JARD、JAIA、アイコム、アルインコ、JVCケンウッド、第一電波工業といったアマチュア無線業界の関係者や技術者が技術的検討を重ねてきた。
TPMSとRKEの周波数は433.92MHz(占有周波数帯域幅250kHz)を想定している。この周波数はすでに日本でも「国際輸送用タグシステム」として特定小電力無線局に割り当てられている(EIRP 1mW以下)もので、平成18年度から令和3年度までに582台の機器が技適を受けている。
公開された報告(案)では、TPMSやRKEが433MHz帯を使用している諸外国の状況や日本のアマチュア局の現状などを紹介。さらに433MHz帯TPMS/RKEがアマチュア局と周波数共用を行った場合の混信状況の確認や共存可能性を検討するため、自動車のテストコースで実機(IC-9700+第一電波工業のホイップアンテナSG9500N)などを使った測定を行い、「TPMSとRKEからの電波がアマチュア無線に与える影響」「アマチュア局の電波がTPMSとRKEに干渉する状況」などを検証し、その結果を報告(案)にまとめている。
総務省が公表した「陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集-小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件のうち433MHz帯タイヤ空気圧モニタ及びリモートキーレスエントリに係る技術的条件-」は以下のとおり(一部抜粋)。
情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会は、諮問第2009号「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」のうち「433MHz帯タイヤ空気圧モニタ及びリモートキーレスエントリに係る技術的条件」について、検討を行ってきました。
この度、陸上無線通信委員会報告(案)を取りまとめましたので、令和6年9月7日(土)から令和6年10月7日(月)までの間、以下のとおり意見を募集します。
1.意見募集の対象
情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会報告(案)(別添PDFのとおり)
2.概要
情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会は、平成14年9月30日付け諮問第2009号「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」のうち「433MHz帯タイヤ空気圧モニタ及びリモートキーレスエントリに係る技術的条件」について検討を行っており、令和6年9月5日(木)に開催された情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会(第87回)において、これまでの検討結果を委員会報告(案)として取りまとめましたので、令和6年9月7日(土)から10月7日(月)までの間、当該報告(案)について意見募集を行います。
3.意見募集の要領
別紙PDFのとおり
4.意見提出期間
令和6年9月7日(土)から10月7日(月)まで(必着)
※郵送については、締切日の消印まで有効とします。
5.今後の予定
寄せられた御意見を踏まえ、陸上無線通信委員会を開催し、報告を取りまとめる予定です。
公表された報告(案)では「433MHz帯TPMS/RKEの技術的基準を次のようにすることが適当である」としている(一部抜粋)。
<一般的条件>
(1)通信方式:利用形態を踏まえ、単向通信方式、単信方式及び複信方式とする。
(2)変調方式:規定しない。
(3)使用周波数帯:諸外国の技術基準との整合を図り、周波数を共用するアマチュア局等への干渉を軽減する観点から、次表のとおり、中央の周波数を433.92MHzとする指定周波数帯とする。
・周波数:433.92MHz
・指定周波数帯:433.795MHzから434.045MHzまで
なお、当該周波数帯の使用に当たっては、一次的基礎として分配されているアマチュア局に有害な混信を生じさせてはならない。また、一次的基礎として分配されているアマチュア局からの有害な混信に対して保護を要求してはならない。
(4)空中線電力:諸外国の技術基準との整合を図り、かつ、諸外国において使用されている無線設備の実態及び周波数を共用するアマチュア局等への干渉を軽減するため、次表のとおりとする。
・空中線電力:等価等方輻射電力において、1mW以下とする。
(5) 空中線系:規定しない。なお、送信空中線が無線設備の一の筐体に収められており、給電線及び接地装置を有しないものであること。
(6)送信時間制限:送信時間は、諸外国の技術基準との整合を図り、周波数を共用するアマチュア局等への干渉を軽減する観点から、1時間当たりの総和を360秒以下とする。また、周期的な送信を行う場合にあっては、電波を発射してから1秒以内にその電波の発射を停止し、かつ、休止時間を1ミリ秒以上とすること。
(7)混信防止機能:通信の相手方を識別するための符号(識別符号)を自動的に送信し、又は受信するものであること。
(8)違法改造への対策:無線設備においては、一の筐体に収められており、かつ、空中線系を除く高周波部及び変調部は、容易に開けることができない構造であること。
◇
なおJARLは9月11日、公式サイトのJARL Webでこの意見募集について紹介した上で、次のように記載している。
『当連盟の森田会長は同委員会の専門委員を務めており、令和6年9月5日に開催された第87回の同委員会においては、「委員会報告案の共用検討では、アマチュア無線への影響は皆無ではないが、実用上問題ないと判断できる結果が出ている。TPMS・RKEからアマチュア無線への干渉はまったくないとは言えない状況ではあるが、世界的なTPMS・RKEの普及等を考慮し、アマチュア無線連盟として、周波数共用は容認せざるを得ないものと考える。一方で、アマチュア無線からTPMS・RKEへの干渉も懸念されることから、自動車業界にはTPMS・RKEのシステム設計等の工夫やユーザ等への周知を図るなどの取り組みに期待したい。また、RKEの動作不良の原因として、アマチュア無線が社会悪とならないように、関係者には十分にご配慮いただきたい。」との発言をおこなっています。
また、アマチュア無線との433MHz帯TPMSおよびRKEとの周波数共用についてはJARL電磁環境委員会がこれまでの経緯をとりまとめているのでご覧ください』
●関連リンク:
・総務省 陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集
・総務省 情報通信審議会情報通信技術分科会陸上無線通信委員会報告(案)(PDF形式)
・(総務省)陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集(JARL Web)
・433MHz 帯を使用したタイヤ空気圧モニタとリモートキーレスエントリとの周波数共用について(JARL電磁環境委員会)
・パブコメ募集:433.92MHzのTPMS・RKE(CIC:JJ1WTL 本林氏のブログ)
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