真空管式からIC・トランジスタへ、アナログ周波数表示からデジタル表示へ--アマチュア無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代だった。全国各地のコレクターが所蔵する当時の無線機の数々を取材し、2012年に刊行されたのが『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』(三才ブックス)という豪華写真集だ。今回はその誌面から、トリオから発売された「送信機」「受信機」のセパレートタイプの集大成として、ソリッドステート化で当時の“世界最小サイズ”を実現した「T-599S/R-599S」を紹介しよう。
TX-88と9R42J、TX-88Aと9R59など、トリオは「送信機」と、そのペアとなる「受信機」を過去数多く発売してきました。これらの集大成といえるモデルが、1973年に発売されたT-599/R-599の「599シリーズ」です。本体は高級感あるブロンズパネルを採用。選局しやすい大型のメインダイヤル(1回転100kHz)と、上部にまとめられたダイヤルスケールとメーター類のエスカッションが特徴的でした。送信機は10WタイプのT-599Dと100WタイプのT-599Sをラインアップ。また受信機は、50/144MHz帯のクリコンやCW/AMのフィルターがオプションのR-599Dと、フル装備のR-599Sがラインアップされていました。
実はこのT-599/R-599発売される4年前に、送信機がTX-599、受信機がJR-599という「初代599シリーズ」も存在していました。基本デザインは同じですが、フロントパネルがシルバーで、メインダイヤルが1回転25kHz。TX-599 にはマイクゲインやキャリアレベル調整つまみがなく、JR-599はノイズブランカーがないといった細かい部分での相違点があります。
(『アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>』 誌面から)
【スペック】T-599S
●発売開始時期:1973年
●周波数範囲:3.5~28MHz帯
●電波型式:SSB/CW/AM
●サイズ:270W×140H×310Dmm
●重量:12.5kg ●電源:AC100V
●最大消費電流:3.5A
●最大送信出力:100W
●送信終段名称:S2001×2
●主要機能と特徴(当時のカタログより抜粋)
▼受信機R-599とのトランシーブ操作が可能▼メインダイヤルは1回転100kHzの精密ギアと高安定VFOにより、1KHzまで直読可能▼SSBジェネレーターにハイフレ型8エレメントクリスタルフィルターを採用▼増幅型ALC採用▼CWサイドトーン内蔵▼ファイナルとドライバーを除いてソリッドステート化
●価格:117,000円
●JARL 登録番号:なし
【スペック】R-599S
●周波数範囲:1.9~28MHz帯、50/144MHz帯
●電波型式:SSB/CW/AM/FM
●サイズ:270W×140H×310Dmm
●重量:5.7kg
●電源:AC100V、DC13.8V
●最大消費電流:1A 以下(DC13.8V時)
●受信方式:ダブルスーパーヘテロダイン方式
●主要機能と特徴(当時のカタログより抜粋)
▼送信機T-599と組み合わせてトランシーブ操作が可能▼1.9~28MHz帯、50/144MHzのほか、10MHzのJJY/WWV、CBバンド(26.8~27.4MHz)も受信可能▼メインダイヤルは1回転100kHz▼SSBとCWに8エレメントクリスタルフィルターを内蔵▼固定チャンネルを5ch装着可能▼モニター回路内蔵
●価格:126,000円
【写真集『アマチュア無線無線機コレクション<FT-101の時代>』について】
日本のアマチュア無線史の中で、無線機器が大きな進化を遂げたのが1970年代でした。送受信部とも真空管を使った大型機が、やがて電力増幅部を除いて半導体化。さらに全部がソリッドステートになり、ICやFETなどのデバイスや、PLLなどの最新技術により小型で高性能なモデルが登場するようになりました。そして家電やカーオーディオメーカーの参入も…。本書はそんな1970年代のアマチュア無線機に「憧れ」や「郷愁」を感じる、すべての人に贈る、初めてのアマチュア無線機写真集です。
●関連リンク:アマチュア無線機コレクション<FT-101の時代>
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