旭化成株式会社は2020年12月25日、子会社の旭化成エレクトロニクス株式会社の半導体製造工場(宮崎県延岡市)で10月20日に発生した火災の状況と製品供給の状況を公式サイトで報告した。現時点では工場の復旧のめどは不明で、顧客(メーカー)には他社製品への切り替えを依頼し、切り替えが難しいものについては代替生産の準備を進めているという。同社の半導体製品の供給停止・遅延は、アマチュア無線業界にも影響を及ぼしている。
通信・音響機器用の半導体やセンサーなどの生産大手である旭化成エレクトロニクスの半導体製造工場の1つ(主な製造部品はアナログ・デジタル混載LSI)で10月20日に火災が発生し、半導体生産ラインなどが被害を受けた。
これにより、同社から基幹部品を調達していた無線機器メーカーにも影響が及び、JVCケンウッドは11月25日に「弊社製品に使用している基幹部品調達に影響が発生し、製品の生産に大きく影響が出る見通しとなりました」と取引先の無線ショップに告知。その後12月1日に「一部部品の調達が滞ることで、今後の当社オートモーティブ分野、パブリックサービス分野における生産の一部に遅延が発生することが予想されます。影響については現在精査中ですが、現時点で当社の今期業績に与える影響は軽微です」と公式サイトで案内。さらに12月24日には(工場火災の影響かは言及されていないが)公式サイトでアマチュア無線機のTH-D74の生産完了決定について異例の発表を行うとともに、「それ以外のアマチュア機は今後も“従来通り生産継続予定」であることを告知した。
またアイコムは12月25日、公式サイトにIRプレスリリースを掲載し、この火災によって「当社グループの一部製品の生産及び販売に影響を及ぼす可能性が生じた」として、2021年3月期連結業績予想への影響と合わせて説明している。
こちらの記事も参考に
<最悪の場合、このまま生産終了になる機種も?>JVCケンウッド、旭化成の工場火災で「無線機のほぼ全機種の製品供給に影響」と発表 (11月25日掲載記事)
<一部製品の生産および販売に影響を及ぼす可能性>アイコム、公式サイトで「取引先の工場火災による影響について」を告知(12月26日掲載記事)
旭化成は12月25日、「半導体製造工場の火災事故および製品供給の状況について」と題した報告を公式サイトに掲載。被災工場の鎮火後の状況と製品供給の状況を下記のように説明した。
半導体製造工場の火災事故および製品供給の状況について(ご報告)
本年10月20日(火)に宮崎県延岡市にあります旭化成エレクトロニクス株式会社(旭化成株式会社の100%子会社、以下「旭化成エレクトロニクス」)の半導体製造工場で発生しました火災につきましては、近隣住民の皆さま、お客さま、関係企業の皆さま、関係当局をはじめとする方々に多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
現時点における被災工場の鎮火後の状況および当該工場で製造しておりました製品供給の状況について、下記のとおりお知らせします。
1.被災工場の鎮火後の状況
2020年10月24日に延岡市消防本部より、「鎮火宣言」が発出されて以降、消防・警察当局による作業が継続しております。 現時点では、火災の原因および当該工場の復旧のめどについては不明です。今後も近隣住民の皆さまの安全に十分配慮しながら、消防・警察の原因究明に全面的に協力してまいります。
2.製品供給の状況について
旭化成エレクトロニクスでは、11月下旬より工場内倉庫に保管しておりました製品在庫の出荷を始めました。また、火災発生後より個々のお客さまと協議のうえ、他社製品への切り替えをお願いするとともに、他社さまに対して当社のお客さまからの問い合わせなどへの対応をお願いしております。さらに、切り替えが難しいお客さま向けとして、代替生産の準備を進めております。現在、一部製品について、複数の半導体製造会社さまにご協力いただいており、今後も関係者の皆さまのご協力を仰ぎながら代替生産の準備を進めてまいります。
本火災によりご迷惑をおかけしました皆さまに改めて深くお詫び申し上げますとともに、製品供給体制の構築にご尽力いただいております関係者の皆さまに御礼申し上げます。今後も火災原因の究明と製品供給体制の構築の双方に努めてまいりますので、関係者の皆さまにおかれましては何卒ご理解ご協力のほどお願い申し上げます。
以 上
現時点では工場復旧のめどは立っておらず、火災前の製造・供給体制に戻るまでにはまだ時間が掛かりそうだ。詳細は下記関連リンク参照のこと。
●関連リンク:
・半導体製造工場の火災事故および製品供給の状況について PDF(旭化成株式会社)
・旭化成株式会社
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