一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)は2018年1月15日、報道各社(新聞、放送、出版、Webメディア)の担当者との「新春記者懇談会」を東京・大塚で開催した。同懇談会における髙尾義則会長(JG1KTC)による「新年の抱負」を掲載する。
JARLは2000年頃まで、毎年末に報道各社の担当者を招いた「記者懇談会」を開催していたが、その後は各社との意見交換の場は設けられていなかった。このほど約17年ぶりに髙尾会長(JG1KTC)と玉眞専務理事(JA1SLS)が出席しての懇談会が復活した。ここでは一問一答形式による髙尾会長の「新年の抱負」を掲載する。
Q1:2017年のアマチュア無線界には、いろいろな出来事がありました。これらを踏まえて、JARL会長としての2018年の抱負をお聞きしたい。
一昨年6月に開催した第5回定時社員総会後の理事会で推されて会長に就任し、昨年は会長就任2年目として、会員皆様ファースト、会員皆様主役の連盟運営に努め、さまざまな取り組みを実施いたしました。会員増強と組織基盤の強化を図るべく各種の会員サービス並びにキャンペーンに取り組みました。新たなキャンぺーン等の成果として、20年以上続いた会員数の減少にストップをかけることができ、会員数を微増傾向に転じることができました。
会員の皆様方に、今後も長年に渡り会員としてご活躍いただきたく、会員サービスのより一層の充実に重点的に目を向けた施策にも積極的に進めてまいります。今年も引き続いて、組織一丸となり“会員皆様ファースト”“会員皆様主役の連盟運営”を継続したいと考えます。
特に昨年は“アマチュア無線界の若返り”を目指し、従来からの22歳未満の青少年への会費助成に加え、入会金、会費を1年間免除する「青少年お試しキャンペーン」を継続するとともにPRに取り組みました。
また、青少年向けイベント開催の必要性を痛感し、各地で継続して実施されている「ARISSスクールコンタクト」等のほかに、JARL組織として初めて若者限定の「WAKAMONOアマチュア無線イベント」を10月に秋葉原で開催いたしました。あいにくの天候にもかかわらず、大変多くの方々にご来訪いただくことができ、青少年育成活動として一定の成果を上げることができたと考えております。これら活動の継続実施が不可欠であると考えます。今年も引き続いて開催すると共に、各地方本部や支部で開催したいと考えます。
昨年9月の「アマチュア無線フェスティバル」では、過去最多のご来場者をお迎えすることができました。例年にも増して「関西アマチュア無線フェスティバル」「東海ハムの祭典」「北海道ハムフェア」などの“アマチュア無線の大型イベント”が各地で大きな盛り上がりを見せた年でもありました。多くの来場者をお迎えすることができました。
平成30年も3月の「西日本ハムフェア」を皮切りに開催され、多くの来場者をお迎えできるよう準備を進めております。さらに、今年3月11日には「東北復興アマチュア無線フェスティバル」を仙台で開催予定です。
楽しくアマチュア無線ができるようするための環境作りの一環として、地方総合通信局規正用無線局とJARLガイダンス局の連携運用も、各地で続けられています。アマチュア無線のルールや秩序を守り、不法局が出にくい電波環境を、力を合わせて作っていきたいと考えております。
Q2:昨年12月には、一昨年に続き「JARLアイボールミーティング」が都内のホテルで開催され、会員の親睦が行われました。
年末の「JARLアイボールミーティング」は、平成23年3月11日の東日本大震災以降、しばらく開催を自粛しておりましたが、一昨年12月から復活開催し、昨年は、アマチュア無線界関係者ほか国会議員、総務省幹部の方々約140名をお迎えし開催いたしました。ご多忙のところに駆けつけていただいた小渕優子衆議院議員(JA1LXG)、杉野 勲総務省総合通信基盤局電波部移動通信課長、相神一裕JAIA会長、急遽お越しいただいた逢沢一郎衆議院議員からも祝辞をいただき、当連盟とは関係の深い団体、企業各社、アマチュア無線OM・YLの皆様など、多くの方々をお迎えできまして望外の喜びでございます。
アマチュア無線と当連盟に関係のある方々が一堂に会し、親睦を深め、情報交換を行う場を持つことは大変重要であり、意義深いことであると考えております。平成30年もハムフェアの「アイボールミーティング」と併せまして、引き続いて開催の予定です。
Q3:JARL会員増強と組織基盤の強化を図るための各種キャンペーン、および青少年育成活動への具体的な取組みをお伺いしたい。
昨年に引き続き、「新規入会IDカードストラップ・プレゼントキャンペーン」「クレジットカード・ロ座自動振替新規登録キャンペーン」などを行っており、好評につきその期間を延長しております。また、会員証をリニューアルし、3年会費をお支払いの方には「プラスチックカード」の会員証とカードストラップをお届けしています。ライフメンバー会費を納入されている皆様や、賛助会員の皆様を対象に、ご継続年数により「IDカードストラップ」や限定の「バッジ」を特典としてお贈りする「サンクス・プレミアム」も実施中です。
前述のとおり、22歳未満の青少年育成のため、前述の青少年への会費助成、「青少年お試しキャンべーン」「WAKAMONOアマチュア無線イベント」などの青少年育成活動は継続していきたいと考えております。
とくに、2017年10月29日(日)に開催した「WAKAMONOアマチュア無線イベント」は、22歳未満の方を対象とした、初の青少年に特化したアマチュア無線イべントで、開催前までに100名を超える参加申し込みをいただき、当日の飛び込み参加の方も多数見られ、全体の参加は250名(年齢層は平均13.5歳)と盛況でした。各種講演、アマチュア無線関連機器メーカーの製品展示のほか、手作りFMラジオ工作教室、特定小電力トランシーバーを使った無線交信体験スタンプラリー、参加の子供たち同士で名刺を交換しあうアイボール名刺交換など、「アマチュア無線への強い関心を引き出すことや、基礎的な楽しみ方を紹介すること」を強く意図した試みとして行いました。
今回の新イベントの効果としては、1月現在、お試し入会で入会された方々の5割もの多くの方が会員を継続されるなど、たいへん大きな成果に繁げることができました。今後も新たな可能性を追求して、昨年開催したイベントを基本として積極的に取り組んでまいりたいと考えます。
Q4:中・長期的なJARL事業活動と展望についてお伺いしたい。
連盟は、わが国の趣味の団体としては、創立から90年以上の長い歴史を持つ伝続を有しています。その歴史の中で、アマチュア無線の健全な発展と、電波利用による科学技術の振興、非常災害時の社会貢献、会員相互の親睦などを掲げて活動してまいりました。これこそが当連盟のアイデンティティーであり、今後も末永く守られていくものです。
一方、世の中の流れとその時の連盟の状況の中で、短期、中期、長期的な見通しは当然変化があり、現代日本に目を転じても、激しく変化する世界の中で、将来の見通しがなかなかつきにくくなっております。これは、連盟にとっても同様です。日本社会の変化、特に、ICTの発展、少子高齢化、若い世代の理科離れは、アマチュア無線人口の減少、アマチュア無線界において次世代を担う若い世代が大変少なくなっている厳しい状況にも反映されております。
先のご質問で、青少年の育成について触れましたが、このような社会状況の中では、特に意識的に粘り強く取り組んで行く必要があると考えています。現在のキャンペーンは終了日のある有期ですが、その都度内容を見直しながら継続して行きたいと考える次第です。今後の課題としては、お試し入会をさらに拡大するのみならず、入会された方々の会員定着を図ること、さらに上の壮年世代への働きかけ、シニア世代の活力を生かせる施策など、少子高齢化を乗り越えられる取り組みを模索していきたいと考えております。会員皆様が、末永く会員としてご活躍いただけるように連盟としてサポートを行っていきたいと考えます。
電波利用の流れについても、細心の注意と慎重な対応が必要です。例えば、1200MHz帯のアマチュア無線は「二次業務」でしたが、実質的にはアマチュア無線専用の状態が長く続いておりましたが、近年FPUや準天頂衛星の測位信号との共用共存が求められるように変化してまいりました。幸いなことに減力等の対応により、周波数帯を失うまでには至りませんでしたが、いつ同様のことが起きるか常に注意する必要があり、柔軟な対応が必要と考えます。
電波は公共の資源であり、公共の福祉とともに利用されるべきものではあり、連盟といたしましては、アマチュア無線家の皆さんの立場に立って、最善の取り組み行いたいと考える次第です。アマチュア無線の果たしてきた役割と存在意義も同様に重要なものであり、今後もその重要性は変わらないものと考えております。今後も周波数利用の効率化等には協力しつつ、アマチュアを無線の発展を目指してまいる所存です。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、アマチュア無線にかかる要請や取り組みも積極的に推し進めてまいります。
最後になりますが、組織一丸となり、引き続いて会員皆様ファースト、会員皆様主役の連盟運営にさらに尽力いたします。
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