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【特別寄稿】相互運用協定のこれまで~一歩進んだアマチュア無線家をめざして<第3回>

外国とのアマチュア無線資格の相互認証(いわゆる相互運用協定=レシプロ)の締結先が久しぶりに増えた。9月29日にニュージーランド(ZL)と の相互認証が施行され、10月にはインドネシア(YB)との相互認証も施行される見込みとなった。そこで、アマチュア無線のコールサインや法制度研究の第一人者、JJ1WTL 本林良太氏の特別寄稿により、レシプロ制度に分析するとともに、これまでの外国人の日本での運用手段を振り返る。今回はその第3回目だ。

 今回はまず、これまでのレシプロの締結先で、渡航先・来航元のどのくらいをカバーできているのか、検証しよう。

●渡航先(日本人の出国先)
 日本人の渡航先でみた、レシプロ対象のカバレッジを調べると、下のグラフのようになった。

 

円グラフ1

 

ここで、青が「レシプロの対象国」、白と黄が「レシプロ非対象国」である。 だいたい4割強の日本人の渡航先は、すでにレシプロでカバーされていることがわかる。

●来訪元(外国人の入国元)
 レシプロ=Reciporocal Operating Agreement(相互運用協定)というくらいで、お互いの国にとって対等なものである。つまり日本への入国組にも配慮が必要だ。ようこそ日本へ。せっかく来たのだから、湯けむり、湖沼、ふるさと富士、ぶち、ウォーターフロント、道の駅…を楽しんで帰ってもらいたい。
 では、前節の渡航先と同様に、来航元でまとめてみよう。総数は917万2,146人となっている(2012年)。

 

円グラフ2

 

 おおむね、日本人の渡航先と大差はなかった。中国(BY)・台湾(BV)・タイ(HS)・香港(VR2)あたりが大きな割合を占めている。なお香港については、中国国籍(VR2(BY))・イギリス国籍(VR2(G))で統計が分かれているので、そのままとした(「別な国」扱いとなっている)。

●次のレシプロ提携先に狙うべき国・地域は?
 …となると、つぎのレシプロ提携先で良さそうなのは、渡航・来航者数で見る限り「中国」となる。が、なかなか難しいだろう。
 その次は「台湾」なのだが…、世の中すべからく「台湾よりも中国が先」という不文律があるようで、それに従うならばほぼ絶望であろう。
 するとつぎの候補は「タイ」。ニュージーランド・インドネシアの次はタイと結ぶのが、効率がよさそうだ。
 もっとも、「レシプロがなければ運用できない」というわけでもない。 相手国の善意に寄るところが大きいが、たとえ中国でも台湾でも、なにかしらの手もあり事例もある。
 反対に、日本への来航者は、国籍は不問ながら「レシプロが必須」なので、心苦しいといえば心苦しい。例外としては、オリンピックや万博などのとても大きな国際イベントの記念局に限っては“神対応”の可能性が残る。

●“CEPT”の可能性
 アマチュア無線界では俗に“CEPT”と呼ばれている、『CEPT』の『Recommendation T/R 61-01』という勧告がある。 ここでの用語については以下のとおりだ。

 ・CEPT: Conference of European Post and Telecommunication、欧州郵便電気通信主管庁会議
 ・T/R: Terms of Reference

 この勧告では、バイラテラル(二国間)ではなく、加盟国間で相互にアマチュア無線の免許を認証し合う、一網打尽のシカケが整えられている。欧州だけに限らず、一部の域外の国も加盟している(Canada, Curacao, Israel, Netherlands Antilles, New Zealand, Peru, South Africa, USA)。上述の両グラフの黄の部分だ。これはオイシイ。
 各個撃破だと「きりがない」のだから、大きく狙うならこれだろう。しかし、調べると結構厳しそうだ。Recommendationの原文は以下で参照できる。

    Recommendation T/R 61-01
    http://www.erodocdb.dk/docs/doc98/official/pdf/TR6101.pdf

 すなわち…そもそもが「ポータブル表示での運用」が大前提となっていて、それが本文に堂々と書かれている。

2.3 When transmitting in the visited country the licence holder must use his national call sign preceded by the call sign prefix of the visited country as indicated in ANNEX 2: and ANNEX 4:. The call sign prefix and the national call sign must be separated by the character “/” (telegraphy) or the word “stroke” (telephony).

 ここに「ジャパンの場合はアキハバラに行って技適マークの付いた無線機を買って、日本語で開局申請を出して、コールサインをもらってね。あ、電波利用料も払ってちょうだい」と追記させるのは、TPPの例外品目交渉よりもタフであろう。

参考URL(渡航者数・来航者数)
 グラフの作成に用いたデータの出所を以下に示す。 単純に総計すると渡航者数は「2,459万9,133人」となる。 ただし、一般に「渡航者数」として参照される『出入国管理統計』の『港別 出入国者』とは不一致がみられ、こちらでは日本人出国者は「1,849万0,657人」となっている(2012年)。両者一致しないが、集計方法が異なるので、深追いせずこのままとする。

・2008年~2012年 各国・地域別 日本人訪問者数 (日本から各国・地域への到着者数)
   http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/pdf/pdf/marketingdata_overseas_taravelers0826.pdf

・出入国管理統計
  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001111180

次回は「外国人運用の歴史――レシプロ前史」と題し、日本で運用する外国人ハムの“不遇の歴史”をたどってみる。

寄稿:JJ1WTL 本林良太

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