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【写真リポート】<5月5日に行われた「こどもの日特別運用2024」>10W機(4アマ)を含め、子供たち9人全員が28MHz帯で南極昭和基地「8J1RL」との交信に成功

今年も5月5日(日・祝)の「こどもの日」に行われた恒例の「こどもの日特別運用」。南極昭和基地のJARL局「8J1RL」が、日本の18歳以下のアマチュア無線局と優先的に交信するイベントで、公募で選ばれた小・中・高校生ら9人(2アマ2人、3アマ4人、4アマ1人、無資格者2人)が東京都豊島区の一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)本部に集まり、JARL中央局「JA1RL」の無線設備で約1万4,000km離れた「8J1RL」との交信に挑戦し、9人全員が無事成功できた。集まった子供たちのうち2人は、アマチュア無線の制度改正で“アマチュア無線の資格を持たない者の体験運用”の条件が大きく緩和された、無資格者による体験運用での交信で、最高の思い出を作ることができた。※画像の一部はJARL提供

 

 

※パソコンでご覧の場合、小さい画像はクリックすると拡大します。

 

 

公募で選ばれた小・中・高校生ら9人(2アマ2人、3アマ4人、4アマ1人、無資格者2人)全員が、南極昭和基地「8J1RL」と28MHz帯で交信成功した

 

 2024年5月5日(月・祝)、第65次日本南極地域観測隊による南極昭和基地のJARL局「8J1RL」と、日本国内の小・中・高校生を優先して交信する「こどもの日特別運用」が行われた。当日は、東京都豊島区南大塚にある一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)本部に、公募で選ばれた小学4年生から高校3年生までの9人とその保護者が訪れ、JARL中央局「JA1RL」の無線設備(10W機、50W機、200W機の3台)で南極との交信に挑戦した。

 

 事前情報では、ブリザード(猛吹雪)の影響で南極昭和基地の八木アンテナが破損し、「こどもの日特別運用」に向けてアンテナ復旧が間に合うか危ぶまれていたほか(2024年4月2日記事)、「こどもの日特別運用」の当日は、数日前から続く活発な太陽フレア(太陽の表面でおきる大爆発)の影響により、磁気嵐やデリンジャー現象が発生。短波帯を中心に通信障害が起こっていて、南極との交信挑戦は不安の中でのスタートとなった。

 

 

7階建てビル屋上にあるJARL中央局「JA1RL」アンテナ群。クランクアップタワーにはたくさんアンテナなどが取り付けられている

南極昭和基地のJARL局「8J1RL」との交信に挑戦する「こどもの日特別運用」に集まった参加者の受け付けがJARL本部の建物前で行われた

 

 16時、集まった参加者を前に交信イベントの主催者を代表して、森田耕司JARL会長(JA5SUD)、JA1RL運用委員会委員長の澤田倉吉JARL東京都支部長(JG1DKJ)の挨拶と、集まった子どもたちの自己紹介などが行われた。

 

 続けて、南極との交信にあたり、今年3月に帰国したばかりの第64次南極地域観測隊として越冬した中村映文さん(JH3LSA)が、南極の環境や生活など、現地で撮影した「1万4千キロメートル離れた南極までの行き方」「昭和基地での生活」「風速18m/sの状況」という内容のビデオを交えながら紹介。南極にはゴキブリや蚊がいないことや、太陽は東から昇って西に沈むが南半球なので動く方向は逆になることなどの興味深い話があった。

 

 JA1RL運用委員会メンバーの新谷一徳さん(7K2GMJ)からは、南極と日本の電波伝搬や交信方法のレクチャーがあり、今回はデリンジャー現象のために交信が極めて難しいことや、まず21MHz帯で8J1RLを呼び掛けてみて、繋がらなかったら28MHz帯へ、さらに状況が回復しなければ14MHz帯へ移ってチャレンジすることなどの説明が行われた。

 

 

交信イベントの主催者を代表して、交信イベントに参加した皆さんへ森田耕司JARL会長(JA5SUD)が挨拶

交信イベントを担う澤田倉吉JA1RL運用委員会委員長(JG1DKJ)ほか、JA1RL運用委員メンバーの紹介が続く

第64次南極地域観測隊として越冬し、今年3月に帰国したばかりの中村映文さん(JH3LSA)が、南極の厳しい環境や現地の生活などの様子をビデオを交えながら紹介

JA1RL運用委員会メンバーの新谷一徳さん(7K2GMJ)が、南極と日本の電波伝搬や交信方法、さらに今日のコンディションが思わしくない状況であることを説明

子供たちは、あらかじめ自分の名前を和文通話表から書き出しておき、交信内容は「RSリポートと自分の名前」の交換というスタイルで進められていった

 

 一通りの説明のあと、16時40分から運用スタッフにより21MHz帯(50W機)のSSBモードで8J1RLへの呼びかけが始まった。コンディションが悪い中、予定された周波数付近はDXペディション局を呼ぶ多数の局や、DXコンテストの影響などによる混信が見られたため、すぐ28MHz帯(50W機)へ周波数を移動した。

 

 再び8J1RLへの呼びかけると、5分も経たずに8J1RLの信号がノイズに埋もれながら聞こえてきた。しかし、8J1RL側も50W機なので信号の浮き沈みが激しい。一瞬だったがシグナルが上がってきて、「こちら8J1RL、JA1RLどうぞ」というクリアな信号がスピーカーから聞こえてきたときは、参加者一同から拍手が沸き起こった。

 

 

第一声で8J1RLを呼ぶ運用スタッフ。その横で森田JARL会長も固唾を飲んで聞き入っている


南極から届くフェージングを伴った弱い信号から、RSリポートと隊員の名前を、JA1RL運用委員会メンバーも協力して懸命に聞き取る

 


アマチュア無線の楽しみの1つであるQSLカードのコレクション。「2021年に交信した8J1RLのQSLカードが手元へ届くまで1年以上かかった」と話すのはJA1RL運用委員会メンバーの新谷さん

 

 

 しばらくするとコンディションの上昇傾向が見られたため、このチャンスを逃すまいと、17時前から3アマの4人が50W機で8J1RLとの交信をスタート。

 

 交信内容は「RSリポートと自分の名前」の交換というスタイルで、子供たちはあらかじめ自分の名前を和文通話表から書き出しておいた内容を伝え、交信相手をしてくれた8J1RLから届くRSリポートと隊員の名前を懸命に聞き取っていった(8J1RL側もオペレートする隊員が次々に変わった)。

 

 コンディションの変化をついて、時間をかけながら3人まで交信に成功したが、4人目で信号が弱くなり、なかなか交信成功に至らない。

 

 

●50W機で挑戦した第三級アマチュア無線技士(3アマ)の資格を持つ4人

 

 

 

 

 

 JA1RL運用委員メンバーも、同軸ケーブルの切替器を取り外してアンテナと同軸ケーブルを直結するなど、少しでも信号ロスを抑えるべく奮闘を続けるが、それでも難しい状況が続いたため、200W機に切り替えて改めて8J1RLを呼び出してみた。

 

 コンディション上昇と重なったのか、今度はクリアな信号が飛び込んできた。急いで3名の体験運用者と、2アマの2人がチャレンジして交信に成功。念のため、4アマの1名も体験運用という形で8J1RLのと交信を終えた。

 

 

●「体験運用」で参加したアマチュア無線技士の資格を持たない2人

 

 

 

●200機で挑戦した第二級アマチュア無線技士(2アマ)の資格を持つ2人

 

 

 

 残るは、先ほど交信できなかった3アマの一人。コンディションが安定したこともあり、50W機で再チャレンジしてみようということで、再び50W機に切り替えて8J1RLを呼び出してみたところ、問題なく交信に成功。これなら…と、体験運用で8J1RLと繋がっていた4アマの一人が10W機で8J1RLとの交信に挑戦してみることになった。

 

 10W機で8J1RLを呼び出すと、さらにコンディションが上昇したのか、8J1RLの信号がハッキリ聞こえてきてリポート交換を済ませることができた。18時過ぎ、参加者9名全員が自身の資格で南極とのコンタクトに成功した瞬間だった。

 

 交信イベント終了後、最後に10W機で8J1RLと交信に成功した4アマの親御さんが、X(旧Twitter)で「娘にとって最高の思い出になったようでホント嬉しい。夕飯を食べている時に自分から『3級とりたい』って言い出して感動した」とポストしていたことが印象深かった。

 

 

●10W機で挑戦した第四級アマチュア無線技士(4アマ)の資格を持つ1人

 

 

 

 

 最後に、森田耕司JARL会長(JA5SUD)から8J1RLに対して謝意を伝えると、8J1RLからは「9人全員成功おめでとうございます!」の声が聞こえてきた。

 

 全員の交信終了後、子供たち一人ずつに森田JARL会長から「交信記念証」が手渡された。また、駆けつけた南極OB会アマチュア無線クラブ会長の小林正幸さん(JR1FVH)から交信成功を祝う挨拶があった。そして、交信に成功した子どもたちは、保護者の方と共に笑顔で交信会場を後にした。

 

参加者9人全員の交信成功に、森田JARL会長から8J1RLを運用した第65次日本南極地域観測隊の皆さんに対して謝意を伝えた


森田JARL会長から子供たち一人ずつに「交信記念証」が手渡され交信イベントは終了した。表面は「JA1RL」のアンテナ群、裏面に「貴殿は南極8J1RLとの交信体験・特別運用に参加され8J1RLと交信したことを証明します」とする内容を記載

 

 

 JA1RLとの交信終了後も、南極では4エリア(中国管内)を中心にオープン。各地から呼ばれていたようで、夜遅くまで8J1RLでは「こどもの日特別運用」を行い、多くの子供たちとの交信に努めていた。

 

 

参加した子供たち9人と保護者のみなさん、運営スタッフで記念撮影

 

 

●関連リンク:
・JARL南極局8J1RL「こどもの日特別運用」体験運用を含め子どもたち9名全員が28MHz帯で交信に成功!(速報)(JARL Web)
・JARL中央局JA1RLが「こどもの日特別運用」の事前PR運用を実施!(JARL Web)
・南極・昭和基地8J1RLが「こどもの日の特別運用」をおこないます!(JARL Web)

 

 

 

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